ワインの値段の違いとは?「高い or 安い」は何で決まるのか、ソムリエが分かりやすく解説!

この記事を読むメリットは以下の通りです。
- ワインの値段が何で決まるのかが分かる
- 誰かに話したくなる「ワインの値段に関する知識」が得られる
- 高いワインの価値を理解して味わえるようになる
- 安いワインの魅力も理解できるようになる
ワインの値段の違い
ワインの値段はピンキリです。スーパーやコンビニで売られているような数百円のワインもあれば、数千円のワイン、数万円〜数十万円のワイン、中には1本で数百万円するようなワインもあります。
同じ「ブドウを原料にアルコール発酵させた飲み物」であるにもかかわらず、ここまで価格差があることに疑問を持たれる方も多いことでしょう。
では一体、ワインの値段が高い or 安いは、何で決まるのでしょうか。
ワインの値段は何で決まる?
ワインの値段は、主に以下の要因によって左右されます。
- テロワール
- ブドウの品質
- 生産者
- ヴィンテージ(生産年)
- ワインのプレミア度(希少価値)
- ワインの格付け
- 専門家の評価
①テロワール
ワインを語る際、「テロワール」と言う用語がよく用いられます。テロワールとは、「ブドウ畑を取り巻く自然環境要因」のことなのですが、詳しく説明するとなかなかややこしいため、ここでは「土地(ブドウ畑)の個性」みたいな意味で理解しておいてください。
テロワールは、「ブドウの品質=ワインの味」を大きく左右します。条件が良いテロワールでは高品質なブドウが出来るため、生まれるワインは高品質になり、ワインの値段も高くなりがちです。
②ブドウの品質
原料であるブドウの品質も、ワインの値段に大きく影響します。ブドウの品質が高ければ高いほど、できあがるワインの味わいも良くなるため、値段は高くなる傾向にあります。一方で、通常品質のブドウから造られたワインは、値段は安いものが多いです。
ブドウの品質は、上記のテロワールに加えて、「収穫方法」「収穫量」「ブドウ樹の樹齢」などに左右されます。
まず、収穫方法は機械よりも手摘みの方が良いとされています。機械での収穫は時間・労力ともにコストカットできますが、ブドウにキズがついてしまい、結果的にワインの品質が低下してしまうためです。
続いて収穫量についてですが、これは言い換えれば、「1本のブドウ樹にいくつの房を実らせるか」です。房を少なくすれば栄養が分散されないため、良質なブドウができます。一方で、1本のブドウ樹に房をたくさん実らせれば収穫量は増えますが、その分ブドウの質は落ちてしまいます。
採算度外視でワイン造りを行うような生産者の中には、1本のブドウ樹に一つの房しか実らせない生産者もいるほどです。
最後に、ブドウ樹の樹齢によってもブドウの品質は変わってきます。一般的に、樹齢が若いブドウ樹よりも樹齢が古いブドウ樹の方が、良質なブドウができるとされています。
しょうさんフランスワインで、ワインの銘柄に「Vieille-Vignes(ヴィエイユ・ヴィーニュ)」と表記されているものがあります。これは、「樹齢が古い樹のブドウから造られていること」を表していて、ワインの品質が高いことの目安になりますね。

③生産者
生産者の質も、ワインの値段に大きく影響する要因の一つです。
一方では、巨大な資本があるがゆえに、最新の醸造設備に投資できたり、著名な栽培家や醸造コンサルタントを雇ってワイン造りをしたりする生産者がいます。他方では、そこまで設備投資できない零細生産者や、商業主義的にコストを抑えて大量生産のワイン造りをしている生産者もいます。
前者のワインは素晴らしい品質のものになりますが、ワイン造りに多大なコストをかけているため、ワインの値段は高くなります。後者のワインは値段が安いですが、ワインの品質は並、もしくはどこにでもあるような工業製品的なワインになったりします。
きむ各生産地にはスター的な扱いをされる生産者たちがいて、彼らのワインには目が飛び出るほどのプレミア価格がつけられているよ。
④ヴィンテージ(生産年)
ワインはヴィンテージによって値段が変わります。この傾向は、特に高級ワインにおいて顕著です。ブドウの出来が良いヴィンテージのワインは長期熟成が期待できるため、投機の対象となって高値で取引されることがあります。
また古いワインの場合、同じ銘柄のワインであっても、「良いヴィンテージのワイン」と「それほど良くないヴィンテージのワイン」では、値段が大きく変わります。
フランス・ボルドーの高級ワイン「シャトー・ムートン・ロートシルト」の小売価格相場
(※2025年11月現在)
・2003年(普通のヴィンテージ):110,000円〜120,000円
・2005年(最高のヴィンテージ):150,000円〜160,000円

⑤ワインのプレミア度(希少価値)
ワインのプレミア度(希少価値)が高い場合も、値段が高くなります。世界最高峰のワインと言われる、フランス・ブルゴーニュ地方のワイン「ロマネ・コンティ」を例に考えてみましょう。
ロマネ・コンティの1年間の生産本数は、平均5,000〜6,000本です。これを、世界中の高級レストランやワイン愛好家が喉から手が出るほど欲しがっています。ロマネ・コンティは、完全に需要が供給を上回っている状態なので、1本で数百万円というプレミア価格が付けられているのです。
このように、ワインの希少価値が高まって需要が供給を上回る状態になれば、そのワインの値段は当然高くなります。世界には、ロマネ・コンティ同様に需要が供給を上回った超プレミアワインが数多く存在します。

ただし、無名の生産者が少ない本数のワインを作ったところで、ロマネ・コンティのように値段が高くなるわけではありません。ワインの品質はもちろん、「ブランディング」が重要になります。
ロマネ・コンティと同じブルゴーニュ地方に、「エマニュエル・ルジェ」という生産者がいます。彼は、かつてブルゴーニュの生産者で神様とまで言われた「アンリ・ジャイエ」の甥で、アンリ・ジャイエのワイン造りを継承していると言われています。
残念ながらアンリ・ジャイエはもう亡くなってしまいました。そのため、ジャイエのワインを飲むことはほぼ不可能なのですが(現存するワインも400万円超えです)、代わりにエマニュエル・ルジェのワインを飲むことはできます。
エマニュエル・ルジェのワインは、「アンリ・ジャイエの味を受け継いでいる」というブランディングゆえに、プレミア価格のワインとなったのです。もちろん、エマニュエル・ルジェが意図的にブランディングしたかどうかは不明ですが…。
このように、「少ない生産本数×ブランディング」により、ワインの希少価値が高まり、値段が高くなることがあります。
⑥ワインの格付け
フランスには、ワインの格付け制度があります。有名なところでは、ボルドー地方・メドック地区の格付け、ブルゴーニュ地方の畑ごとの格付けです。格付け制度がある地方では、格付けが高いワインほど値段も高くなる傾向にあります。
【ボルドー・メドック地区の格付けとは】
1855年のパリ万国博覧会の際に、ナポレオン3世の要請を受けて制定されたメドック地区独自の格付け制度です。1級から5級まで、61のシャトー(ワイン)が格付けされています。
<1級格付けのワイン(=5大シャトー)>
1. シャトー・ラフィット・ロートシルト
2. シャトー・ムートン・ロートシルト
3. シャトー・ラトゥール
4. シャトー・マルゴー
5. シャトー・オー・ブリオン
しかし、この格付けは当時の流通価格をもとに制定されたうえに、これまで1度の変更があっただけでほとんど見直されていないため、必ずしも格付けと品質が比例しているわけではない点には注意が必要です。
ブルゴーニュ地方では、ワインの名前が「地方名 → 村名 → 畑名」となっており、畑名が付くワインが最も高品質とされています。しかし、歴史的に一つのブドウ畑を複数の生産者で分割所有してきたため、「同じ畑名のワインを複数の生産者が造っている」というややこしい事象が発生しています。
そこでブルゴーニュでは、ボルドーのようなワインごとの格付けではなく、畑ごとに格付けがされています。格付けが高い畑ほど良質なブドウが獲れるため、ワインの品質が高く、値段も高くなります。

⑦専門家からの評価
著名なワイン評論家から高く評価されたワインや、世界的なワインの品評会において高い評価を受けたワインが、一気にスターダムへとのし上がって値段が高くなることがあります。また、有名人が関与したことにより一躍有名になり、入手困難な高額ワインになることもあります。
これらのワインは、それまで無名だったものが突然脚光を浴びる=一夜にして運命が変わることから「シンデレラワイン」と呼ばれ、非常に高額で販売されています。以下に一例を挙げておきます。
- シャトー・ヴァランドロー(フランス、ボルドー)
- シャトー・ル・パン(フランス、ボルドー)
- スクリーミング・イーグル(カリフォルニア)
- カレラ(カリフォルニア) など
しょうさん最後に、ワインの値段を決める要因を、もう一度おさらいしましょう。
- テロワール(土地の個性)
- ブドウの品質
- 生産者
- ヴィンテージ(生産年)
- ワインのプレミア度(希少価値)
- ワインの格付け
- 専門家の評価
きむワインの値段の高い・安いは、これらの要因が複合的に絡み合って決まっているんだね。
ぴのこワインの値段を左右する要因はよく分かったわ。でも、ここまでの説明をふまえると、やっぱり高いワインが美味しくて、安いワインはそれほど美味しくないということになるのかな?
ワインの値段と美味しさは比例するのか
ワインの値段と美味しさは比例するのか…?
結論から言うと、ある程度は比例します。これまで解説してきたとおり、値段が高いワインというものは、条件が良い畑の高品質なブドウを用いて高いコストをかけて造られています。その意味では、値段が安い大量生産のワインに比べて、値段が高いワインの方が美味しいというのは当然でしょう。
しかし、「美味しい・美味しくない」は個人の感覚であるため、高いワインの方が絶対に美味しいとは言えません。安いワインの方が高いワインよりも美味しく感じる人もいるはずです。
有名なTV番組「芸能人格付けチェック」では、1本数千円のワインと数百万円のワインが比較されたりしていますね。一流芸能人なら高い方のワインを当てられるはずというエンタメですが、多くの芸能人の方々が安い方のワインを高い方だと言って、外しているのを目にします。
おそらく、外した芸能人の方々は「自分が美味しいと思った方」を選んだのでしょう。このことから分かるように、全ての人が高いワインを美味しいと感じるとは限らないのです。
個人的に、ワインの美味しさは「何を飲むか」よりも「誰と・どんなシチュエーションで飲むか」によって大きく左右されると思っています。
ソムリエの仕事をしていると、1本数十万円〜数百万円のワインを飲む機会もあり、確かに美味しかったです。
しかし、ソムリエ見習いでお金がない時代に同僚と飲んだ数百円のコンビニワイン、気の置けない友人と朝まで飲み明かした千円のワイン、恋人とビストロで飲んだ数千円のワイン。これらのワインだって、高いワインに引けを取らないほど美味しかったなと、しみじみ思います。
まとめ
- 良い条件の畑で採れた高品質のブドウから造られたワインは、値段が高い
- 大量生産された並の品質のブドウから造られたワインは、値段が安い
- コストをかけたワイン造りを行なう生産者のワインは、値段が高い
- コストを抑えた商業主義的な生産者のワインは、値段が安い
- 良いヴィンテージのワインは、値段が高い場合がある
- 並のヴィンテージのワインは、良いヴィンテージのワインに比べて値段が安い場合がある
- プレミア度(希少価値)が高く、需要が供給を上回るワインは値段が高い
- 格付け制度がある地域では、格付けが高いワインほど値段が高く、格付けが低いワインは値段が安い傾向にある
- 専門家から高い評価を受けたワインが、一躍脚光を浴びて高額ワインになることがある