【雨のグランピング】元祖オレンジワインと80年熟成のシェリーで至福の時間

少しずつ秋めいてきた10月中旬。京都・祇園のワインバー「祇をん尚」のソムリエしょうさんと、秋のグランピングをかましてきました。オジ2人でのグランピングに誰が興味あんねん!との声も聞こえてきそうではありますが、至福の時間を過ごせたので書き残したいと思います。
はじまりはいつも雨
さて、ソムリエしょうさんとは一緒によく遊ぶのですが、彼と出かけるときはなぜかいつも雨。はじまりはいつも雨どころか、はじまりから終わりまでいつも雨です。ASKAも驚いていることでしょう。
思い返せば、二人が同じ大阪のホテルに勤めていた頃。「ベネンシアドール」というシェリー酒のプロ資格の試験で、一緒に東京へ行ったことがありました。無事に合格したのですが、大きな額ブチに入った資格証は郵送してもらえないとのこと。大阪まで大きな資格証を抱えて帰らなければならないのに、その日はどしゃ降りでした…。
つい最近では、滋賀県までウナギのしゃぶしゃぶを食べに行った日。予約時間まで時間を潰そうと京都のお店にて二人で飲んでいたのですが、その店を出る直前から京都一帯は記録的な豪雨。
昨年、和歌山でグランピングをした時も雨。そして今回のグランピングも相変わらずの雨予報でした。どう考えても、しょうさんが雨男でしょう。もしくは私?
阪南スカイドームへ向かう
今回のグランピングでは、阪南スカイドームという施設を訪ねました。数あるグランピング施設の中から阪南を選んだ理由は、ズバリ「海鮮BBQで貝をたらふく食べたかったから」です。
泉佐野漁協 青空市場は海鮮が激安!
このグランピング施設の近く(と言っても車で20〜30分ほどの距離)には、「泉佐野漁協 青空市場」があります。この市場では、貝類をはじめとした新鮮な海鮮類が驚くほど安く買えるとの噂を聞きつけたので、ここで食材を調達して持ち込みBBQをするのが今回のメインの目的です。
行きの車中、しょうさんがどうせ直前にネットか何かで仕入れたであろう浅い知識を、得意げに披露してきます。
しょう「貝は、水が汚いところの方が美味しいねんで」
きむ「そうなんや。なんで?」
しょう「三重県のハマグリの名産地は知ってる?桑名、あそこも工業地帯やろ。水が汚いから貝がうまいねん」
きむ「うん、で、水が汚いところの貝が美味しいのはなんでなん?」
しょう「今から行く泉南あたりも繊維工場が多いしな。水汚いで。絶対ハマグリ買おうな!」
きむ「うん、だから、なんでなん?」
体は分厚いくせに貝の知識は薄っぺらいしょうさんに聞いても埒があかないので、ネットで検索してみることにしました。しかし、水が汚い方が貝は美味しいという根拠がネットではなかなか見つからず、AIに聞いてみることにします。
AIに聞いてみた 【汚い水で育った貝が美味しいとされるのはなぜ?】
貝類(特にカキ、アサリ、ハマグリなど)は水中のプランクトンや有機物を食べて成長します。
そのため、貝が育つ水域に植物プランクトンや有機物が多い(=栄養豊富な)ほど、貝はよく太り、旨味成分(グリコーゲン、アミノ酸など)を多く蓄える傾向があります。
この「栄養が多い水域」が、見た目には「濁っていて汚い」と表現されることがあります。
美味しい貝がいる“汚い水”というのは、あくまで自然の有機物が豊富な汽水域(川と海が混じる場所)などを指すことが多いです。
つまり、「汚い水=栄養豊富で濁っている水」のことであり、工場地帯の水ではないということですね。先ほどの車中での会話は、一体なんの時間だったのでしょう。
市場に着くと、午後の競りが終わったところでしょうか。各店、美味しそうな海鮮が所狭しと並べられています。市場は見て回るだけでもテンションが上がりますね。
特に貝の種類が豊富だった「クレハラ商店」さんで、食材を調達することにしました。

こちらのクレハラ商店さん、そもそもの値段がかなり安いのに、さらにそこから持ってけドロボー!と言わんばかりに値引きしてくれます。ボタン海老は「1パック(10尾)で1,200円」なのに、お姉さんが「もう、2パック(20尾)で1,200円にしとくわ!」みたいな感じです。
この調子で貝類も、2パックで1パック分の値段に値引きしようとしてくれたのですが、2人では食べきれないので1パックを少しずつ値引きしてもらいました。
最終的には以下の海鮮を総額6,600円で購入できました。新鮮な海鮮をこの値段で買えたのは恐悦至極でしたが、クレハラ商店さんの経営が心配になりますね…。
そして、あれだけ「絶対買うぞ!」と意気込んでいたハマグリを買い忘れたことに気づいたのは、市場を出発した後でした…。
ハマグリを泣く泣く諦めて、近くのスーパーで肉類や野菜を調達し、阪南スカイドームへ向かいます。
阪南スカイドームに到着
泉佐野 青空市場から車を走らせること約30分、阪南スカイドームに到着しました。山の中腹にあって非常に静かな環境に、心が躍ります。

阪南スカイドームは、大阪府阪南市の阪南スカイタウン展望緑地にあり、全16棟の大型ドームテントが配置されたグランピング施設。犬同伴で泊まれるドームや、サウナ付きドーム、ジャグジー付きドームなどがあり、幅広いニーズを満たせる点も魅力です。
我々が今回泊まるのは、バレルサウナ付きのドームです。この時は雨が降りそうでまだ降っておらず、このまま降らないことを願うばかりでした。

またこちらの施設からは、日本夕陽百選にも選ばれた夕日の情景や、大阪市内・関西国際空港、・淡路島・神戸などの美しい夜景が楽しめます。施設のスタッフは、こんな超カップル向けグランピング施設にオジ2人が来るとは、夢にも思っていなかったはずです。
案の定、我々の隣のドームでは若いカップルがすでにBBQを楽しんでおり、意気揚々と乗り込んできたオジ2人を怪訝そうな顔つきで見ていました。きっと彼らの間ではこんな会話が繰り広げられていたことでしょう。
女「見て、おっさんが二人で泊まりに来てるわよw」
男「こんな夜景がキレイでおしゃれなところにおっさん二人で来るなんて、きっとワケありに違いないぜw」
女「やめなさいよ、今は多様性の時代でしょw」
男「それか、良い歳して一緒に来れる奥さんや彼女もいないから、寂しい中年同士で傷を舐め合っているんだろw」
女「ウケるーww」
カップルよ、すまないが皆目見当違いだ。我々は、ただただ純粋に、BBQと酒とサウナを楽しみに来ただけの陽気なおっさん達なのだ。


ひと通り自分たちのドームを見回り、海鮮BBQの準備をします。
海鮮BBQとシャンパン&オレンジワイン

ドームに併設されているBBQスペースで、海鮮BBQのスタートです。今回は宿泊特典として3Lの生ビールサーバーをプレゼントしていただいたので、お言葉に甘えて、まずは乾いた喉にビールを流し込みます。
ビールのお供はボタン海老のお刺身。新鮮で臭みもなく、甘味がギュッと詰まっていてとても美味しいボタン海老でした。

「これはシャンパンでしょ!」と、しょうさんが差し入れてくれた「シャルル・エドシック ブリュット・レゼルヴ」で乾杯します。
新鮮なボタン海老とシャルル・エドシック。この時点でもう幸せです。
シャルル・エドシックといえば、世界中の紳士から愛される英国王室御用達のシャンパンですね。まさに、気品あふれる我々にこそふさわしいシャンパンだと言えるでしょう。

そこからは、貝BBQのオンパレードでした。牡蠣はメスティンで贅沢にもシャンパン蒸し。ホタテは殻付きのままバター醤油焼き。

サザエとツブ貝は壷焼きにします。ただし、ツブ貝は軽く茹でてから取り出して唾液腺を取り除き、もう一度殻に詰めて壷焼きにします。ツブ貝の唾液腺には毒があるので、この下処理は必須です。
【ツブ貝の唾液腺】
ツブ貝の唾液腺には、テトラミン(唾液腺毒)という毒素が含まれていることがあります。除去せずに食べると、頭痛・めまい・船酔い感などの症状が現れることがあるため、注意が必要です。
気にせず食べる方もいるようですが、私は必ず取り除いて食べるようにしています。
サザエもツブ貝もシャッキシャキの食感で、磯の風味が口いっぱいに広がります。ちなみに、サザエの肝は苦味が強いですが、ツブ貝の肝は苦味が少なくクリーミーで食べやすいです。個人的にはツブ貝の方が好きですね。

味が濃くなってきたので、シャンパンではなくワインに切り替えます。貝のBBQは白ワインを合わせても美味しいのですが、今回はオレンジワインを用意しました。
リボッラ 1996(ヨスコ・グラヴナー)。イタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の土着品種であるリボッラ・ジャッラで、伝統的な製法を用いて造られたオレンジワインです。

下記オレンジワインの解説記事でも紹介していますが、ヨスコ・グラヴナーはオレンジワインを世に広めた第一人者。まさにオレンジワインの元祖とも言える生産者です。
グラヴナーのオレンジワインは、一般的なオレンジワインとは一線を画します。目隠しをして飲めば、赤ワインと間違えてしまうほどしっかりとした渋味があり、オレンジピールのような苦味、アプリコット、ドライパイナップル、ハチミツなど、非常に複雑な香りが楽しめます。
コクがあるタイプのワインなので、味が強い貝のBBQにはもってこいです。なかなか素晴らしいマリアージュでした。
シメに、余っていたツブ貝や牡蠣、ボタン海老などでアヒージョを作り、パスタをぶち込んで食べましたが、このあたりはあまり記憶が定かではありません。ただ、出来上がったパスタが「殺す気か!?」くらいしょっぱかった記憶だけはあります…。
少し酔いを冷ましてから、焚き火と葉巻を楽しむことにしました。

80年熟成のシェリーと葉巻、焚き火で至福の時間
日頃の行ないが特に良いわけでもない我々の願いが、天へ届いたのでしょうか。BBQを終えても曇り状態で、雨はまだ降っていませんでした。

雨が降らないうちに焚き火をやってしまおうということで、ドーム併設の庭へ出て暖炉に薪をくべます。ゆらゆらと燃える炎を見ていると、ふいに自分の心と静かに向き合いたい気持ちが湧いてきました。パチパチと薪が燃える音と鈴虫の音色を聴きながら、目を閉じて心の声にそっと耳を傾けます。
(なんで曇りやねん…)
大した心の声が聞こえてこないことに絶望しつつ、雨男のしょうさんを呪います。本来であれば、宝石を散りばめたような星空が我々を待っていたはずなのですが…。
隣で同じく目を閉じているしょうさん。どうせ彼の心の声は、(キレイなおねえさんと来たかったなぁ…)くらいのものでしょう。鼻の下がだらしなく伸びていますよ。
気を取り直して、しょうさんが用意してくれた本日メインのシェリー「トロ・アルバラ ドン・ペーエキス PX コンベント・セレクション 1946年」と葉巻を楽しみます。
PX(ペドロ・ヒメネス)とは、スペインで造られる極甘口のシェリーで、干しブドウや黒蜜、カカオ、コーヒー、甘草などスパイスの香りが特徴的です。
シェリーは酒精強化ワインといって、ブランデーなどを加えてアルコール度数を高めたワインです。
ペドロ・ヒメネスのような極甘口のシェリーは長熟なのですが、さすがに80年近くも熟成したものにお目にかかるのは初めてでした!


若いシェリーはアルコールをきつく感じることもありますが、さすがは80年熟成。
アルコールの角は丸くなり、リッチな甘味・酸味・コクが渾然一体となってシルクのように滑らかな口当たりになっています。
葉巻にはラムを合わせるのが定番なのですが、実は甘口のワインも非常によく合うのです。
薪が燃えて空に上がる火の粉を眺めながら、親しき友と、極上のシェリーと葉巻。これ以上の至福の時間があるでしょうか。「何のために仕事をしていますか?」と質問されれば、私は間違いなく「この幸せな瞬間のために仕事をしている」と答えるでしょう。
自分にとっての幸せとは何か。日々に忙殺されたり、誰かや何かに縛られて生きていると、つい見失いがちですよね。でも、大好きな人と大好きなものを共有しながら同じ時を過ごすことができれば、大概の人は幸せを感じられるのではないでしょうか。
夜が更けてきたうえに、雨も降って寒くなってきたので、ドーム内に戻って就寝することにしました。
いくら寒いとはいえ、まだまだ10月中旬です。にもかかわらず、知らぬ間にドーム内の暖房をつけて、しかも「28度・強風」にセットして大きなイビキをかいているしょうさんに殺意を覚えながら、そっと暖房を消し、眠りにつきました。

翌朝は雨の中のサウナ
翌朝もあいにくの雨でしたが、二日酔い対策のバレルサウナを心ゆくまで楽しんで、今回のグランピングは終了です。
昨年からすっかりグランピングにハマってしまったオジ2人。次は12月頃に行きたいなと話しています^^
今回飲んだワインを紹介しておきます。