【ソムリエ厳選】おすすめシェリー10選 〜フィノ編〜


本記事では、ソムリエであり、酒精強化ワイン「シェリー」のプロフェッショナル「ベネンシアドール」の資格をもつ私が厳選した「おすすめフィノ10選」をご紹介します!

フィノは辛口シェリーの代表格
10種類あるシェリーのうち、辛口タイプの代表格が「フィノ」です。
フィノの味わいは、白ワインに近いです。ただ、フロールと呼ばれる産膜酵母の下で熟成されるフィノは、鼻をツンとつく心地良いイースト香と、空気に触れずに熟成したことによる強いフレッシュさなど、普通の白ワインとは異なるキャラクターをもっています。

フィノは魚介料理との相性は抜群です。また、和食や中華料理に合わせても大変美味しいです。自宅の晩酌でも大活躍するワインなので、ぜひ試してみてください。
ソムリエおすすめ【フィノ10選】

それでは、シェリーのプロ厳選のおすすめフィノ10選をご紹介します!
- ゴンザレス・ビアス ティオ・ぺぺ
- エミリオ・ルスタウ フィノ・ハラーナ
- バルデスピノ イノセンテ・フィノ
- サンデマン ドライセコ フィノ
- グティエレス・コロシア フィノ
- オズボルネ フィノ キンタ
- サンチェス・ロマテ マリスメノ フィノ
- ウィリアムズ&ハンバート ドライ・サック フィノ
- エミリオ・ルスタウ アルマセニスタ フィノ・デル・プエルト
- アルベアル フィノ・エン・ラマ シングル・ヴィンテージ
①ゴンサレス・ビアス ティオ・ぺぺ
数あるシェリーの中で最も有名なのは、ゴンサレス・ビアス社のティオ・ぺぺではないでしょうか。
ゴンサレス・ビアス社は、1835年にマヌエル・マリア・ゴンサレス・アンヘルが、叔父のホセ・アンヘル・デ・ラ・ペーニャの助言を受けて創設したシェリーメーカー。「ティオ・ぺぺ」とはこの叔父のホセを指す言葉で、日本語で「ぺぺ叔父さん」の意味です。
ぺぺ叔父さんは、当時は地元でしか飲まれていなかったフィノが大好きで、自分用に熟成していました。これを、イギリスに輸出したところ大変な人気となり、ゴンサレス・ビアス社はティオ・ぺぺを世界的なブランドに育てあげていったのです。
これぞフィノ、これぞシェリーといった味わいのティオぺぺは、シェリー入門にぴったりの1本です。初めてシェリーを飲むという方は、まずティオ・ぺぺから試してみてください。
②エミリオ・ルスタウ フィノ・ハラーナ
エミリオ・ルスタウは、1869年にホセ・ルイス・ベルデホによって創業されました。
元々は、ワインを作って酒精強化し、シェリーとして貯蔵熟成まではするが出荷はしない「アルマセニスタ」と呼ばれるタイプの業者でした。しかし、1950年代に入ってからは、出荷まで行う業者となりました。
エミリオ・ルスタウのシェリーは、総じてレベルが高いです。どれを飲んでも美味しいこと間違いありません。フィノ・ハラーナは、フィノにしてはふくよかなボディをもっており、アーモンドの香りが強いのも特徴です。コクのあるフィノを飲みたいという方におすすめです。
③バルデスピノ イノセンテ・フィノ
1264年、かつてアラブに支配されていたヘレス(現在のシェリーの産地)の地を解放したスペイン国王「アルフォンソ10世」が、ヘレスの領地を貴族たちに分配してブドウ畑を開墾させました。その際に領地の分配を受けた貴族の一人が「アロンソ・バルデスピノ」です。
バルデスピノ一族は、それ以来ずっとワイン生産に携わり、19世紀の前半にシェリーの輸出を始めました。
マチャルヌードと呼ばれる最高のブドウができる区画にある畑「イノセンテ」の、最高品質のブドウを使って造られたシェリーがイノセンテ・フィノです。オーク樽で発酵され、最低8年の熟成を経て出荷されるため、色が濃くて非常に旨味が強く、凝縮感のある深い味わい。
食前酒というよりは、食中酒として料理に合わせて楽しみたいフィノです。
④サンデマン ドライセコ フィノ
サンデマンはシェリーの大手メーカーで、ポルトガルの酒精強化ワイン「ポート」のメーカーとしても知られています。1790年、スコットランド人のジョージ・サンデマンがロンドンで設立し、スペインの「ヘレス」とポルトガルの「ポルト」に拠点を設け、ワイン造りをスタートさせました。
フレッシュ&ドライで軽快な口当たり。価格もリーズナブルなので、常に冷蔵庫にストックしておき、食前酒としてゴクゴク飲みたい1本です。
⑤グティエレス・コロシア フィノ
グティエレス・コロシアは、1838年に創業されたシェリーメーカーです。
シェリーの産地の南側を流れるグアダレーテ川の河口、大西洋に近い地域に貯蔵庫があり、シェリーの熟成にとても適した環境で良質なシェリーを生み出しています。
平均3年〜5年の熟成で出荷されるフレッシュなフィノは、食前・食中を問わず楽しめます。スペインの世界一予約が取れない三ツ星レストラン「エル・ブジ」でもオンリストされていたほどの銘酒です。ぜひ一度味わってみてください。
⑥オズボルネ フィノ キンタ
オズボルネは、イギリスのトーマス・オズボーンが1772年に創立したシェリーメーカー。フィノ・キンタは、真っ赤なラベルに真っ黒の闘牛にシルエットが特徴的なボトルです。
青リンゴの爽快な風味に、フロール由来の心地よいイースト香やアーモンドの香りがうまく溶け込んで、非常にバランスのとれた味わいです。冷やして飲んでいただくのが美味しいですが、キンキンに冷やすのではなく、12度〜15度あたりの温度が美味しいです。
スペイン国内でも圧倒的な人気を誇るブランドです。フィノ・キンタを飲まずしてシェリーは語れません。
⑦サンチェス・ロマテ マリスメノ フィノ
1781年、ヘレス出身のフアン・サンチェス・デ・ラ・トーレが設立したシェリーメーカーが、サンチェス・ロマテです。平均熟成年数4年とやや短めのシェリーでありながら、とても芳醇な味わい。
マリスメノ・フィノは、焼きたてのパンのようなイースト香やナッティな風味が強く、後味には心地よい苦味が感じられます。ワイン単体で飲むよりも、イタリアのパルミジャーノやフランスのコンテなど、ハードタイプのチーズと合わせて楽しみたい1本です。
⑧ウィリアムズ&ハンバート ドライ・サック フィノ
ウィリアムズ&ハンバートは、シェリービジネスのためにヘレスの地に来ていたイギリス人「アレクサンダー・ウィリアムズ」が、義父の「アーサー・ハンバート」とともに設立したシェリーメーカーです。設立は1877年。
世界中のワイン愛好家からも高く評価されており、生み出すシェリーはどれも高品質。「ドライサック フィノ」は、生き生きとした酸味とフレッシュな果実味に、控えめなイースト香が加わって、とてもライトな味わい。夏の暑い日にゴクゴク飲みたいシェリーです。
⑨エミリオ・ルスタウ アルマセニスタ フィノ・デル・プエルト
2本目で紹介したエミリオ・ルスタウの「アルマセニスタシリーズ」。アルマセニスタとは、ワインを醸造して酒精強化し、シェリーとして貯蔵熟成までを行っている業者のことを指します。小規模ではありますが、代々受け継がれてきた素晴らしいシェリーをストックさせている生産者たちです。
アルマセニスタのシェリーは、大手メーカーに買い取られ、ブレンド用に回されるのが一般的です。しかし、アルマセニスタが貯蔵しているシェリーの中には、個性的で非常に素晴らしいものもあります。それらアルマセニスタのシェリーを、ブレンドせずにそのまま出荷しているのが、エミリオ・ルスタウのアルマセニスタシリーズです。
フィノ・デル・プエルトは淡い琥珀色をしており、ヘーゼルナッツやアプリコット、はちみつ、キャラメルなどの香ばしくて甘い香りが特徴です。少しの苦味と心地良い渋味が、余韻として長く続きます。
最高品質のフィノです。食後などに、シェリー単体でじっくりと味わいたい1本。
⑩アルベアル フィノ・エン・ラマ シングル・ヴィンテージ
最後の1本は、変化球のフィノをご紹介します。シェリーはスペイン・アンダルシア地方の「ヘレス」という地で造られる酒精強化ワインですが、実はスペイン国内にはヘレス以外にも、シェリータイプのワインを造っているところがあります。
そのひとつが、ヘレスの北部にある「モンティーリャ・モリレス」で生まれるワインです。
シェリーと同じ熟成システム「ソレラ・システム」で造られるのですが、モンティーリャ・モリレスのワインはシェリーと違って酒精強化をしません。内陸にあるモンティーリャ・モリレスでは、ブドウの糖度が高くなり、アルコール度数が高いワインができあがります。そのため、酒精強化する必要がないのです。
アルベアル フィノ・エン・ラマは、モンティーリャ・モリレスで造られるシェリータイプのワインで、フィノに似た風味をもっています。エン・ラマとは「樽出しの味わい」といった意味で、無清澄・無濾過のワインのことです。
さらに、ヘレスのフィノが辛口シェリー用のブドウ「パロミノ 」で造られるのに対し、アルベアル フィノ・エン・ラマは「ペドロ・ヒメネス」という極甘口シェリー用のブドウ品種から造られます。辛口でありながら、ほんのり甘さを感じるフィノタイプに仕上がっているのです。
ヘレスのフィノは経験したので、次はちょっと変わり種を試してみたいという方にオススメの1本です。
まとめ
フィノはシェリーの中で最もスタンダートなタイプです。シェリー未経験の方は、まずはフィノから飲んでみることをおすすめします。今回ご紹介した10本のフィノはどれも美味しいので、ぜひ飲んでみてください。
アルコール度数を高めてあるシェリーは、普通のワインよりも少量で気持ち良く酔えるコスパが良いワインです。開封後も2〜3週間は美味しく飲めるため、家飲み用にもバッチリです!

フィノは8〜10℃くらいに冷やして飲むようにしてください。温度が高いと、せっかくのフレッシュな風味とキレの良い酸味がぼやけてしまいます。また、できれば料理やおつまみと合わせて飲んでみてくださいね。