酒精強化ワイン「マデイラ」とは?種類や造り方、美味しい飲み方をソムリエが解説!


マデイラって、たしか酒精強化ワインでしたよね?あまり詳しく知らないので、どんなワインなのか教えてもらえますか?

ぴのこさん、ワインをかなり勉強していますね。マデイラはシェリー、ポートと並ぶ世界三大酒精強化ワインのひとつです。シェリーやポートの影に隠れがちですが、実はとても素晴らしいワインなんですよ。

今回は、マデイラとはどんなワインなのかをプロが解説します!種類や造り方、美味しい飲み方までわかりやすく解説するから、ぜひ読んでみてね!
マデイラとは?
マデイラとは、ポルトガルで造られる酒精強化ワインです。酒精強化ワインは、アルコール度数を高めて保存性や甘味・コクを高めたワインです。
マデイラは、シェリー、ポートと並んで世界3大酒精強化ワインに数えられています。


マデイラは調味料?
マデイラは料理に使用されることが多く、レシピ本にも頻繁に登場するため、名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。缶詰のミートソースなどにも使われていますね。
日本ではまるで「みりん」のような調味料扱いをされがちなマデイラですが、本来は飲むためのワインです。食前酒・食中酒・食後酒として、世界中で愛されているワインなのです。
アメリカと関係が深いマデイラ
マデイラは、18世紀頃にアメリカで爆発的な人気を誇っていたワインです。当時、マデイラの総輸出量の3分の2はアメリカ向けだったと言われています。
その人気もあって、1776年アメリカ独立宣言の際、乾杯に使用されたのはマデイラでした。他にも、ジョージ・ワシントンがアメリカ大統領に就任した際や、アメリカ合衆国の首都がワシントンD.Cに決定した際にもマデイラで乾杯された記録が残っています。
マデイラは驚くほど長寿
後に詳しく解説しますが、マデイラは他の酒精強化ワイン「シェリー」や「ポート」と異なり、特殊な製法で造られます。
それゆえに、ただでさえ長持ちする酒精強化ワインの中で、マデイラが最も長寿なワインと言われています。数百年前のマデイラが現存しており、今でも美味しく飲めるほどです。
また、開栓してから1ヶ月ほどは味が落ちないため、通常のワインのように慌てて飲みきる必要もありません。料理に使うこともできますし、家に1本あればとても重宝するでしょう。
マデイラの産地

それでは、マデイラの産地について見ていきましょう。
大西洋の真珠「マデイラ島」

マデイラは、ポルトガル領のマデイラ島で造られます。マデイラ島は、ポルトガルの首都リスボンから南西へ1,000kmほどの大西洋に浮かぶ島です。どちらかと言えば、アフリカ大陸に近いところに位置しています。
マデイラ島は年間を通して温暖な気候で、一年中トロピカルな花が咲き誇る美しい島です。そのため、避寒地として大人気のリゾート地で、「大西洋の真珠」とも呼ばれています。
マデイラは人口が約25万人、総面積は741㎢ほどの島です。中心都市のフンシャルはいつも観光客で溢れかえっており、非常に活気があります。
しかし、フンシャルを離れれば大自然がそのまま残っています。標高1860mの「ピコ・イルヴォ」などの山々が連なり、平地は非常に少ないのが特徴です。それらの山の急斜面に、所狭しとマデイラ用のブドウが植えられています。
マデイラのブドウ畑について
マデイラのブドウ畑は、島中の斜面に広がっています。斜面にブドウ畑が作られているのはポートと同じですが、マデイラの方はもっと勾配がきついです。そのため、マデイラのブドウの収穫は機械化が難しく、ほとんどが人力で収穫されています。

マデイラはもともと火山島で、平地が少ないうえに森には木々が密集していたため、切り開くのが非常に困難でした。そこで、人々が移住して島を開拓した際には、島全体に火が放たれたそうです。その結果、火山岩の上に燃えた木々が重なって現在のマデイラ島の土壌が形成されました。
ブドウ畑の土壌は、場所によって異なります。最も栽培に適しているのは、「サイプロ」と呼ばれる石が混じった凝灰岩の土壌です。
また、土壌だけでなく標高もブドウの栽培に大きく関係します。ブドウ畑があるのは標高330〜750mあたりの比較的低いところで、それぞれの標高に適したブドウ品種が栽培されています。
マデイラのブドウ樹の仕立ては、地面から2mほどの高さにワイヤーを張って蔓を這わせる「棚づくり」が主流です。

マデイラのブドウ品種
マデイラのブドウ品種には、以下のものがあります。
【白ブドウ】
・マルヴァジア
・ボアル
・ヴェルデーリョ
・セルシアル
【黒ブドウ】
ティンタ・ネグラ・モーレ
マルヴァジア
マルヴァジアは甘口マデイラの使用される白ブドウで、主に海岸沿いの暑い地域で栽培されています。マルヴァジアのマデイラは、しっかりと甘味を残すために発酵初期で酒精強化されます。
リッチなコクと甘味をもつ、濃褐色のマデイラになります。
ボアル
ボアルは、中甘口のマデイラ造りに使用される白ブドウです。主に標高300〜400mの、比較的温暖な南部地域で栽培されています。
ボアルのマデイラは琥珀色をしており、甘さと酸味のバランスが取れた中甘口です。中程度の甘味を残すために、発酵途中の糖分が半分ほど残っている段階で酒精強化されます。
ヴェルデーリョ
ヴェルデーリョは、比較的涼しい島の北部、標高400〜600mで栽培される白ブドウです。主に中辛口のマデイラ用に使用されます。
ヴェルデーリョのマデイラはオレンジゴールド色をしており、はっきりとした燻製の風味や蜂蜜の香りが特徴です。
中辛口に仕上げるため、酒精強化は発酵後半に行われます。
セルシアル
セルシアルは辛口マデイラ用の白ブドウで、標高600〜700mの冷涼な地域で栽培されています。一説には、ドイツのラインガウで栽培されていたブドウ品種「リースリング」を持ってきたものだと言われています。
セルシアルのマデイラは淡いゴールド色をしており、キレが良い辛口に仕上がります。
ドライに仕上げるために、酒精強化は発酵終了の直前に行われます。
ティンタ・ネグラ・モーレ
マデイラのブドウ収穫量の80%以上を占めるのが、黒ブドウのティンタ・ネグラ・モーレです。島のあらゆる場所で栽培されており、辛口タイプから甘口タイプまで様々なマデイラのブレンド用に用いられます。

マデイラの種類(分類)
マディラの種類には、「ブドウ品種による分類」と「製法・熟成年数による分類」の2種類があります。
ブドウ品種による分類
ラベル記載名 | 色 | 特徴 |
---|---|---|
セルシアル(Sercial) | ゴールド | キレの良い酸味を持った辛口 |
ヴェルデーリョ(Verdelho) | オレンジゴールド | 燻製っぽい風味を持った中辛口 |
ボアル(Boal) | 琥珀色 | 香リ高い中甘口 |
マルヴァジア(Malvasia) | 濃褐色 | ねっとりとした質感の甘口 |
ティンタ・ネグラ・モーレ(Tinta Negra) | ー | 辛口〜甘口まで |
マデイラには、ボトルにブドウ品種名が記載されているものがあります。甘辛度ごとに使用されるブドウ品種が決まっているため、ボトルに記載されているブドウ品種を見れば、だいたいの味が想像できるようになっています。
セルシアルは辛口、ヴェルデーリョは中辛口、ボアルは中甘口、マルヴァジアは甘口のマデイラだと覚えておいてください。ティンタ・ネグラ・モーレだけは甘口〜辛口まで様々なタイプがあるため、品種名だけで味を想像するのは難しいでしょう。

製法・熟成期間による分類
タイプ | 詳細 | 収穫年表示 |
---|---|---|
フラスケイラ/ガラフェイラ | 単一年・単一品種のブドウから造られる。 出荷するまでに、20年以上の樽熟成と2年以上の瓶熟成が義務付けられている。 | 収穫年の表示あり |
コリェイタ | 単一年のブドウから造られるが、ブドウは単一品種でなくても良い。 出荷するまでに5年以上の樽熟成が義務付けられているが、瓶熟成は不要。 | |
レゼルヴァ | 熟成期間が5年のマデイラ。10年熟成ものをスペシャル・レゼルヴァ、15年熟成ものをエクストラ・リゼルヴァと呼ぶ。 | 収穫年の表示なし |
ブドウ品種による分類の他に、マデイラには製法・熟成方法による分類があります。
収穫年表示があるマデイラは、「フラスケイラ(ガラフェイラ)」と呼ばれます。いわゆるヴィンテージ・マデイラで、100年以上前のものも珍しくありません。
フラスケイラ(ガラフェイラ)は単一年・単一のブドウ品種で造られ、20年以上の樽熟成と2年以上の瓶熟成を経て出荷されます。ボトルには収穫年とブドウ品種が記載されます。
他にも、収穫年が表示されるマデイラに「コリェイタ」があります。こちらも単一年のブドウで造られるヴィンテージ・マデイラですが、フラスケイラ(ガラフェイラ)と違って単一のブドウ品種でなくても構いません。また、5年以上の樽熟成のみで出荷できます。
コリェイタは、フラスケイラ(ガラフェイラ)よりもお手軽なヴィンテージ・マデイラといった位置付けです。
収穫年の表示がないマデイラで、最低熟成期間が表示されるものに「リゼルヴァ」があります。これらは、複数収穫年のワインをブレンドして造られます。
リゼルヴァは最低熟成年数が5年で、10年はスペシャル・リゼルヴァ、15年はエクストラ・リゼルヴァと呼ばれます。最低熟成期間が20年や30年のものもありますが、めったに見かけることはありません。
リゼルヴァにはブドウ品種が表示されているものと、されていないものがあります。品種名が表示されているものは、そのブドウが85%以上使用されています。品種名表示がないものは、主にティンタ・ネグラ・モーレから造られています。
マデイラの造り方

続いて、マデイラの造り方を詳しく見ていきましょう!
収穫
マデイラのブドウの収穫は、8月から10月にかけて行われます。急斜面が多いマデイラのブドウ畑では機械による収穫が難しく、すべて手作業です。
収穫されたブドウは除梗・破砕され、ブドウ果汁を得るためにプレスの工程に入ります。
この時、除梗・破砕したブドウを先にプレスしてブドウ果汁だけを発酵させる方法と、ブドウの果実と果皮・種も一緒に発酵させてからプレスする方法があります。前者はすっきりとした味わいのワインに仕上がり、後者はコクや深みがあるワインに仕上がります。
これはメーカーによって違ったり、長期熟成タイプかどうかや甘辛度によっても使い分けられたりします。
酒精強化
発酵の工程に入ったワインは、酒精強化(=アルコールを加える)されます。マデイラの酒精強化のタイミングは、甘辛度によって異なります。

マデイラの酒精強化のタイミングについて話す前に、アルコール発酵をおさらいしておこう。アルコール発酵は、原料の糖分が酵母の作用によって「アルコールと二酸化炭素」に分解されることだったね。

酒精強化をすると、酵母の働きが弱まってアルコール発酵がストップします。原料の糖分がまだ残っている発酵途中に酒精強化すれば、甘口のアルコール度数が高いワインができあがりますし、糖分が完全に無くなった発酵終了後に酒精強化すれば、辛口のアルコール度数が高いワインができあがります。
マデイラの各タイプにおける酒精強化のタイミングは、以下の通りです。
タイプ(甘辛度) | 酒精強化のタイミング |
---|---|
セルシアル(辛口) | 発酵終了後 |
ヴェルデーリョ(中辛口) | 発酵がかなり進み、適度に糖分が残っている段階 |
ブアル(中甘口) | あまり発酵が進んでいない、かなり糖分が残っている段階 |
マルヴァジア(甘口) | ほとんど発酵させていない段階 |
このように、マデイラは酒精強化のタイミングによって甘辛度を調整しています。酒精強化には、ブドウから造られたアルコール度数96%のスピリッツ(蒸留酒)が使用されます。
加熱処理
酒精強化されたワインは、数ヶ月間の安定期間を経て「加熱処理」に入ります。この加熱処理はマデイラ独特の工程で、熟成を早める目的で行われます。

マデイラの加熱処理の元ネタは17世紀の大航海時代。イギリスとインドを往復する船に積まれてたマデイラのワインが、赤道を越える航海の暑さの影響で美味しくなってたんだ。その味を人工的に再現するために考え出されたのが加熱処理なんだよ。
マデイラの加熱処理方法は、主に3種類あります。
加熱方法 | 詳細 | どんなマデイラに使う? |
---|---|---|
クバ・デ・カロール | ワインの樽の中にパイプを通し、その中に温水を流す方法。 | 現在ではあまり使われていない |
エストゥファ | 加温装置付きのステンレスタンク内でワインを温める方法 | ティンタ・ネグラ・モーレなど、スタンダードな普及品に使われる |
カンテイロ | 窓ガラスのある建物の2階や屋根裏部屋にマデイラの樽を並べ、太陽熱で温室状態にしてワインを加熱する方法 | 単一ブドウ品種で、長期熟成させる高級タイプに使われる |
3年熟成ものなど、スタンダードなマデイラの加熱処理にはエストゥファが用いられます。加熱期間が3ヶ月ほどと短く、手っ取り早く加熱の効果が得られるためです。エストゥファで加熱処理されたマデイラは樽に移され、熟成期間に入ります。
一方、フラスケイラ(ガラフェイラ)などの単一ブドウ品種・長期熟成の高級マデイラには、カンテイロが用いられます。自然の太陽熱でじっくりと時間をかけて加熱するため、ワインの風味を損なうことなく加熱効果が得られるのです。エストゥファの加熱処理が3ヶ月ほどで済むところを、カンテイロでは2年かかると言われています。
年間を通して16℃〜22℃と暖かいマデイラ島では、カンテイロで自然加熱するための条件が整っており、夏には庫内の温度が50℃ほどまで上がります。

熟成・出荷
加熱処理を終えたマデイラは、熟成に入ります。
まず、新しく造られたワインは単一品種として出荷できるかどうか、フラスケイラなど長期熟成タイプになるポテンシャルがあるかどうかなどを判断され、グループ分けされます。
一般的に、マデイラの熟成はアメリカン・オークの木樽で行われます。樽の大きさは、600ℓくらいのものから30,000ℓくらいのものまで様々です。
フラスケイラのような収穫年表示マデイラを除いて、ほとんどのマデイラは出荷前に複数収穫年のワインがブレンドされます。各メーカーにはブレンダーが在籍しており、彼らのブレンドの技量によってそのメーカーの味が決まります。
ブレンドされたマデイラは安定期間を経て冷却・清澄され、ボトリング・出荷されます。最終的にマデイラのアルコール度数は、17%〜22%になります。
マデイラの美味しい飲み方

最後に、ソムリエ直伝のマデイラの美味しい飲み方を紹介します!
ケーキに合わせて楽しむ

中甘口・甘口のマデイラは、デザート全般と相性が良いです。中でも、ドライフルーツを使ったパウンドケーキとの相性は抜群です。
甘口のマデイラなら、チョコレートケーキなども良いでしょう。
野鳥料理(ジビエ)に合わせて楽しむ
辛口・中辛口のマデイラは、ジビエとの相性が良いです。鶉(ウズラ)や鶫(ツグミ)、鴨などの野鳥のロースト料理とぜひ合わせてみてください。
甘口のマデイラは、フォワグラ料理との相性が抜群です。フォワグラのムース、パテ、ソテー、何でも最高のマリアージュになりますので、こちらもぜひ合わせていただきたいです。
シガー(葉巻)と楽しむ

個人的にマデイラの最高の楽しみ方は、葉巻と合わせて飲むことです。
ヴィンテージポートと葉巻の相性が良いことはよく言われていますが、マデイラと葉巻も最高の組み合わせです。
特に、フラスケイラ(ガラフェイラ)のような長期熟成マデイラと葉巻は、忘れられない体験になることでしょう。熟成したマデイラには、ドライフルーツやタバコの葉の香りなど、葉巻と共通の香りが現れます。同じ香りを持つもの同士、相性が良いということです。
また、葉巻は飲み進めると辛くなってきます。そのタイミングでマデイラを一口飲むと、甘味が葉巻の辛さを中和してくれ、口の中をリフレッシュされるのです。

まとめ
シェリー、ポートと並ぶ世界三大酒精強化ワインのひとつ「マデイラ」。加熱処理をしていることから、3つの中で最も長寿の酒精強化ワインだと言われています。開栓してから1ヶ月以上は味が落ちないため、家飲みにも最適なアイテムと言えます。
マデイラ未経験の方は、まずはスタンダードな普及品長期熟成したマデイラから試してみてください。そしてマデイラの味に親しんできたら、フラスケイラなどの長期熟成マデイラを飲んでみることをお勧めします。
長期熟成のマデイラでも、熟成した銘醸赤ワインの10分の1ほどの価格で購入できます。マデイラの真価は長期熟成したものにありますので、ぜひ一度試してみてください。