ワインのブドウ品種って、たくさんあってワイン初心者には難しいです。自分の好きな味のワインを飲むには、どのブドウ品種を選べばいいんですか?
たしかに、最初はブドウ品種からワインの味を想像できないですよね。でも、基本のブドウ品種ごとの特徴さえ知っておけば、ブドウ品種から自分の好みのワインを探すことができるようになりますよ。
今回はワインのブドウ品種について解説しようか。特徴やブドウ品種ごとの名産地、選び方まで徹底解説や!
よろしくお願いします!
ワインのブドウ品種について
世界には、ワイン用のブドウ品種が1,500種類ほどあると言われています。そのほとんどが、おそらくあまり耳にしたことがない名前でしょう。ワイン用のブドウは、私たちが日常的に食べている生食用のブドウとは異なる品種だからです。
ワイン用のブドウは、生食用のブドウと違って皮が厚くて種が多いです。酸味や渋味も生食用と比べて豊富なため、決して「そのまま食べても美味しい」というものではありません。その代わり、ワインになった時にその真価を発揮します。
もちろん、生食用のブドウでもワインは造られています。例えば、日本でもおなじみの生食用ブドウ「デラウェア」から、実際にワインは造られています。しかし、高品質ワインはほぼ例外なくワイン専用のブドウ品種から造られていることを、まずは知っておきましょう。
1,500種類もあるの!?しかも生食用のブドウとは違う名前なんて、覚える自信がないな…。
主要なブドウ品種はそれほど多くないから、安心してや。赤ワイン用ブドウで12品種、白ワイン用ブドウで10品種ほど覚えておけば好みのワインを見つけられるし、立派なワイン通やで!
私たちソムリエでも、多くて100種類くらいのブドウ品種しか飲んだことがないと思いますよ。世界には、現地でしかお目にかかれないようなブドウ品種がたくさんありますからね。
安心しました。10種類くらいなら覚えられそうです。
【赤ワイン】基本のブドウ品種の特徴
ほな、赤ワイン用のブドウから紹介していこか。まずは、この12品種を押さえてたら大丈夫やで!
- カベルネ・ソーヴィニヨン
- メルロー
- ピノ・ノワール
- シラー(シラーズ)
- ガメイ
- ネッビオーロ
- サンジョヴェーゼ
- テンプラニーリョ
- ジンファンデル
- マルベック
- カルメネール
- マスカット・ベーリーA
1. カベルネ・ソーヴィニヨン
赤ワイン用ブドウ品種の代表格が「カベルネ・ソーヴィニヨン」です。よく耳にするボルドーの赤ワインは、このカベルネ・ソーヴィニヨンを主体に造られています。
カベルネ・ソーヴィニヨンは世界各地で栽培されている国際品種で、高品質なワインを生むことから「赤ワイン用品種の王様」と呼ばれています。皮が厚く、豊富なタンニンを有するブドウです。また、するのがやや遅く、主に暖かい気候の地域で栽培されています。
渋味が非常に強くパワフルな風味であるため、カベルネ・ソーヴィニヨン100%でワインが造られることはまずありません。多くの場合は次に紹介する「メルロー」や、「カベルネ・フラン」などのブドウ品種をブレンドして渋味を和らげ、味のバランスがとられています。
カベルネ・ソーヴィニヨン主体のワインは渋味が強く、どっしりと重たいフルボディのワインに仕上がります。若いうちは渋味がやや荒々しいですが、熟成させることで滑らかになり、素晴らしく優雅なワインになります。
2. メルロー
メルローはフランス・ボルドー地方原産のブドウ品種で、カベルネ・ソーヴィニヨンと同様に世界中で栽培されている国際品種です。
カベルネ・ソーヴィニヨンと違って、比較的冷涼な地域でも栽培可能なうえに収穫量も多いため、近年ではカベルネ・ソーヴィニヨンよりも生産者の間で人気があると言われています。
メルローはカベルネ・ソーヴィニヨンよりも果実が大きくて皮が薄く、フルボディで果実味たっぷり、酸味が控えめで渋味が柔らかいワインに仕上がります。
そのためメルローは、カベルネ・ソーヴィニヨン主体のワインのパワフルさを和らげるためにブレンドされることが多い品種なのですが、メルロー主体で造っても非常に素晴らしいワインを生みます。さらに、メルロー単体でも驚くべき高品質ワインになります。
メルロー100%で造られてる銘醸ワインはたくさんあるで。特にフランス・ボルドーの「ル・パン」、イタリア・トスカーナの「マッセート」なんかは、メルロー好きなら一生に一度は飲んでみたいワインやな。
3. ピノ・ノワール
フランス・ブルゴーニュ地方で素晴らしい品質のワインを生むピノ・ノワール。味も価格も世界最高峰と言われるワイン「ロマネ・コンティ」は、このピノ・ノワールから造られています。
ピノ・ノワールのワインの特徴を一言で表すと、エレガントです。赤ワイン用ブドウの王様「カベルネ・ソーヴィニヨン」の対極にあるようなブドウ品種で、果皮は薄く渋味は控えめ、爽やかな酸味をもっています。
ブレンドに使われることはほとんどなく、多くの場合は単体でワインが造られます。また、フランスのシャンパーニュ(シャンパン)を造るブドウ品種でもあります。
栽培が非常に難しいとされており、一昔前まではフランスやドイツの冷涼な地域でしか栽培されていませんでした。アメリカやニュージーランドでの成功例を受けて、現在では世界各地で栽培される国際品種となっています。
ピノ・ノワールのワインは繊細でチャーミング、非常に女性的と言われています。ジューシーな果実味とキレイな酸味があり、若いうちに飲んでも十分に楽しめるワインです。
ただしピノ・ノワールの銘醸ワインは、少なくとも10年以上は熟成させて飲みたいところです。良い熟成をしたピノ・ノワールの官能的で妖艶な香り・味わいは、一度飲んだら虜になるはずです。
私の一番好きなブドウ品種!
4. シラー(シラーズ)
シラーは南フランスのワインに多く見られるブドウ品種です。フランス・ローヌ地方の「コート・ロティ」や「エルミタージュ」などが、シラーの銘醸ワインとして知られています。
シラーは小粒で果皮が分厚く、渋味たっぷりでスパイシーなワインを生みます。このスパイシーさがあるゆえに、シラーのワインは好みが分かれるところです。
オーストラリアでは「シラーズ」と呼ばれており、フランスに負けない高品質なワインが造られています。オーストラリアのシラーズはシラー特有のスパイシーさが控えめで、果実味が凝縮した濃厚なワインです。
フランスのシラーが好みではなかったという方も、オーストラリアのシラーズを一度試してみてください。キャラクターの違いに驚くと共に、シラーが大好きになるかもしれません。
5. ガメイ
ガメイは、フランス・ブルゴーニュ地方原産のブド品種です。ボージョレー・ヌーヴォーで有名なフランスのブルゴーニュ地方・ボージョレー地区のワインは、このガメイから造られています。
ガメイのワインはフルーティーで渋味・酸味ともに控えめ、とても親しみやすいワインです。アルコール度数もそれほど高くないライトボディのワインなので、ワインを飲み始めて間もない方や「重い赤ワインはちょっと…」という方も、ガメイのワインなら美味しく飲めるのではないでしょうか。
全体的にガメイのワインは熟成向きではなく、若いうちの方が美味しく飲めます。「ガメイのワイン=今すぐ飲んで美味しい」と覚えていただいて問題ありません。
ただ、中にはボージョレーワインの最高峰「ムーラン・ナ・ヴァン」のように、10年ほどの熟成に耐えうる逸品も存在します。
6. ネッビオーロ
イタリアで最も高貴なブドウ品種と言われるのが、ネッビオーロです。イタリア・ピエモンテ州の銘醸ワイン「バローロ」や、「バルバレスコ」を生むブドウ品種として知られています。栽培が非常に難しく、イタリアの限られた地域でしか栽培されていない土着品種です。
ネッビオーロのワインは、若いうちは渋味・酸味ともに非常に強く、荒々しくて固い味わいです。熟成によって荒々しかった渋味はシルクのような滑らかさになり、芳醇な香りを持つ驚くべきワインに変貌します。熟成のポテンシャルは、数あるブドウ品種の中でもトップクラスではないでしょうか。
最近では時代の流れもあってか、近代的な製法を駆使し、若いうちから美味しく飲めるネッビオーロのワインがたくさん造られています。しかし本当のネッビオーロの底力を知るには、伝統的な製法で造られ、数十年間の熟成を経たワインを飲んでみる必要があるでしょう。
7. サンジョヴェーゼ
サンジョヴェーゼは、イタリア全土で栽培されているブドウ品種です。有名なイタリア・トスカーナ州の「キャンティ」も、このサンジョヴェーゼから造られています。
一般的にサンジョヴェーゼのワインは、フレッシュな果実味、しっかりとした酸味と中程度の渋味があります。ただ、クローン品種が多いのと産地ごとに個性が異なるため、「サンジョヴェーゼのワイン=◯◯な味わい」と定義するのがなかなか難しいワインでもあります。
例えば、トスカーナ州の「キヤンティ」がフレッシュな果実味と酸味の親しみやすいワインである一方で、同じトスカーナ州でサンジョヴェーゼから造られる「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」は、厳格な渋味と酸味をもつ重厚なワインです。
イタリア原産のブドウは、土着品種として国内だけで栽培されているものが多いのですが、サンジョヴェーゼは近年アメリカやオーストラリアでも栽培されています。
基本的には単一か、イタリア系ブドウ品種をブレンドして造られることが多いサンジョヴェーゼのワインですが、1970年代頃からはカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどの国際品種とブレンドした、高品質なワインが造られています。(イタリア・トスカーナ地方のスーパー・タスカンと呼ばれるワイン)
8. テンプラニーリョ
テンプラニーリョは、主にスペイン全土やポルトガルで栽培されているブドウ品種です。スペインワインの銘醸地「リオハ」が原産と言われています。
果皮が薄くやや小粒のブドウで、ほど良い酸味と豊かな果実味、滑らかな渋味をもつワインを生みます。基本的には冷涼な気候を好むブドウ品種ですが、温暖な気候にも順応します。どちらかといえば、冷涼な気候のテンプラニーリョの方が長期熟成に向いています。
その適応力の高さゆえに世界中で栽培されており、世界第3位の栽培面積を誇るブドウです。
テンプラニーリョは別名(=シノニム)が多いブドウ品種で、スペイン国内だけでも数種類の呼び名があります。以下は全てテンプラニーリョなので、間違わないように注意してください。
地域 | テンプラニーリョの呼び名 |
---|---|
スペイン リオハ | テンプラニーリョ |
スペイン リベラ・デル・ドゥエロ | ティント・フィノ ティント・デル・パイス |
スペイン ラ・マンチャ | センシベル |
スペイン トロ | ティンタ・デ・トロ |
スペイン ペネデス、カタルーニャ | ウル・デ・リェブレ |
ポルトガル ドウロ、ダンス | ティンタ・ロリス |
ポルトガル アレンテージョ | アラゴネス |
9. ジンファンデル
ジンファンデルは、カリフォルニアワインを語る上で外せないブドウ品種です。19世紀前半からカリフォルニアで栽培されているブドウですが、そのルーツは南イタリア・プーリア州にあります。
長い間、カリフォルニア独自の品種だと思われていたジンファンデルですが、1990年代にプーリア州で古くから栽培されてきたブドウ品種「プリミティーヴォ」と同じDNAであることが判明しました。
ジンファンデルは、果実の大きさが中くらいで果皮は薄く、色素が濃いのが特徴です。果実ごとの成熟度にバラつきが出やすく、一つの房の中に驚くほど糖度が高い果実もあれば、そうでない果実もあります。そのため、時にアルコール度数が非常に高いワインになったりするのも、ジンファンデルの面白いところです。
10. マルベック
マルベックは、南西フランスが原産のブドウ品種です。南西フランスでは、このマルベックから黒ワインと呼ばれるほど非常に濃い色をした赤ワイン「カオール」が造られています。ちなみにカオールでは、マルベックはオーセロワという別名で呼ばれています。
南西フランス原産のブドウ品種ではありますが、最大の栽培国はアルゼンチンです。マルベックは、1853年にアルゼンチンにもたらされましたが、長年栽培されてきたにもかかわらずあまり注目されていませんでした。1980年代に入ってアルゼンチンワインの品質向上とともに世界的にも注目を集めるようになり、現在の地位を確立するに至りました。
マルベックは小粒で果皮が厚く、色素が濃いブドウです。そのため、渋味たっぷりの濃厚でパワフルなフルボディワインに仕上がります。同じくらい力強いカベルネ・ソーヴィニヨンのワインと比べて、マルベックの方がフルーティーで青っぽい香りが少ないという違いがあります。
11. カルメネール
カルメネールはフランス・ボルドー地方原産のブドウ品種です。とはいえ、今ではボルドーでほとんど栽培されておらず、世界最大の栽培国はチリとなっています。
カルメネールは、19世紀半ばにボルドーからチリへ持ち込まれました。ところが長い間、チリではメルローと間違って栽培され続けていました。1994年にDNA鑑定の結果、メルローとは別の品種であることが判明し、農業省農牧庁の認証を受けて1996年からカルメネールの名称でラベルに記載されるようになりました。
カルメネールの語源は、真紅色を意味するカルミネ(Carmine)です。語源のとおり濃い色素のブドウで、渋味がたっぷりの濃厚なワインに仕上がります。
熟すのが遅いため、若いうちに収穫してしまうとピーマンのような青っぽい香りが強いワインになってしまいます。この特徴は比較的リーズナブルなデイリーワインに多く見られます。
同じようなキャラクターのカベルネ・ソーヴィニヨンに比べて柔らかく滑らかな口当たりなので、カベルネ・ソーヴィニヨンが少し苦手な方にもおすすめです。
12. マスカット・ベイリーA
マスカット・ベイリーAは、日本生まれのブドウ品種です。1927年、新潟で最初のワイナリー岩の原葡萄園の創業者「川上善兵衛」氏により開発されました。アメリカ系品種の「ベーリー(Bai-ley)」と、ヨーロッパ系品種の「マスカット・ハンブルグ(Muscat Humburgh)」の交配品種です。
房と果実は大きいですが、皮は薄め。そのため、果実味が豊かで渋味が穏やかなチャーミングなワインに仕上がります。
マスカット・ベイリーAは、生食用でも売られているブドウ品種ですが、近年はワイン用ブドウ品種として非常に高い評価を得ています。フレッシュなタイプから樽熟成したパワフルなタイプ、スパークリングワインなど様々なタイプのワインになります。
渋味が少なくフルーティーで軽やかな味わいで、和食によく合うとされています。
赤ワイン用ブドウ品種の選び方
赤ワイン用ブドウ品種から好みのワインを選ぶには、以下の表を参考にしてください。
渋味が強くて濃いフルボディワインが好きな人は、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、マルベック、カルメネール 、ネッビオーロなどのワインを選ぶと良いでしょう。
濃くて重いワインが好きだけど、渋味はもう少し穏やかな方が良いという人は、シラー、サンジョヴェーゼ、テンプラニーリョなどがおすすめです。
渋味が少なく、フレッシュ&フルーティーなライトボディの赤ワインなら、ガメイやマスカット・ベイリーAで決まりです。
果実味たっぷりで渋味が中程度の、ミディアム〜ミディアムフルボディあたりのワインがお好みなら、ピノ・ノワールやジンファンデルが口に合うかと思います。
ただし、これらはあくまで目安に過ぎません。同じブドウ品種でも、産地・生産者(製法)によって味わいは異なります。ブドウ品種を一通り飲んでみたら、次は同じブドウで違う産地・生産者のワインを味わってみると面白いでしょう。
【白ワイン】基本のブドウ品種の特徴
さて次は、白ワインのブドウ品種やな。この10種類を覚えておけば間違いないで!
- シャルドネ
- ソーヴィニヨン・ブラン
- リースリング
- ピノ・ブラン
- ピノ・グリ
- ゲヴュルツトラミネール
- ミュスカ
- ヴィオニエ
- シュナン・ブラン
- 甲州
1. シャルドネ
世界中で最も有名で人気がある白ワイン用ブドウ品種が、シャルドネです。世界中の主要ワイン産地では必ずと言って良いほど栽培されています。世界最高峰の白ワインと言われる「モンラッシェ」は、シャルドネから造られていますね。
シャルドネは、ブドウ自体の個性はニュートラルだと言われています。ニュートラルがゆえに、生産地の気候や醸造テクニックの影響を色濃く反映するため、一口にシャルドネといっても様々なワインのタイプがあります。
例えば、ステンレスタンクで発酵・熟成されたシャルドネは、キリッとした酸味を持つフレッシュ&ドライな白ワインに仕上がります。一方で、樽発酵・樽熟成されたシャルドネは、柔らかい酸味でコクがあってまろやかな味わいです。
また、寒い地域で造られたシャルドネのワインはレモンやライムなどの柑橘系の風味が強いのに対し、暖かい地域のシャルドネはパイナップルなどのトロピカルフルーツのような風味があります。
ぜひ色々なシャルドネを試してみて、自分の好きな味を発見してみてください。
2. ソーヴィニヨン・ブラン
シャルドネに次いで人気があるのブドウ品種が、ソーヴィニヨン・ブランです。シャルドネ同様、世界の主要ワイン産地で栽培される国際品種で、栽培量はシャルドネに次いで世界2位を誇ります。
ソーヴィニヨン・ブランは、房が小さく晩熟という特徴があります。爽快な酸味とフレッシュな果実味に加えて、独特のハーブのような清涼感をもったワインが生まれます。
冷涼な地域ではレモンやライム、グレープフルーツなどの柑橘系の香りに、フレッシュハーブの青い風味が強く感じられます。一方、温暖な地域のソーヴィニヨン・ブランは、ハーブの清涼感は少し控えめになり、完熟グレープフルーツやパッションフルーツ、パイナップルなどのトロピカルな風味が強くなります。
3. リースリング
白ワインのブドウ品種の中で、「最も高貴な品種」と言われるのがリースリングです。冷涼な気候を好むため、フランスのアルザス地方やドイツなど、わりと北の方にある寒い地域を中心に栽培されています。近年ではアメリカやオーストラリアなどでもリースリングから高品質なワインが生まれています。
リースリングのワインは、レモンやライムなどの柑橘系フルーツの香りに、青リンゴのような爽やかな香り、白い花などの香りが感じられます。また、上質なリースリングのワインにはペトロール香(石油のような香り)が顕著に現れます。この香りで、リースリングのワインだと判別がつくほど特徴的な香りです。
リースリングには、辛口から甘口、遅積み・貴腐ワイン・アイスワインなどの極甘口まで、様々なワインのタイプがあります。そのため、ラベルを見ただけでは甘口なのか辛口なのか、なかなか判断がつきにくいでしょう。
ここでは、2大産地のフランス・アルザス地方とドイツにおける、リースリングの甘辛度を判別する方法を簡単にご紹介します。
ワイン産地 | リースリングの甘辛度の見分け方 |
---|---|
フランス・アルザス地方 | アルザスのリースリングは、基本的に辛口〜中辛口。 甘口には「vendenge tardives(ヴァンダンジュ・タルディブ=遅積み)」や、 「selection de grains nobles(セレクション・ド・グラン・ノーブル=貴腐ワイン)」 のラベル表記がある。 |
ドイツ | 以下のラベル表記を参考に。 ・Trocken(トロッケン=辛口) ・Halbtrocken、Feinherb(ハルプトロッケン、ファインヘルプ=中辛口) ・Lieblich(リープリッヒ=中甘口) ・Suss(ズース=甘口) |
リースリングはミネラル感が強いんですね。でも、ミネラル感って正直よく分からないんです。どんな感じなんですか?
ミネラル感は感覚的なものなので、明確な定義はありません。香りに使うときは、石灰(チョークの粉っぽい香り)のニュアンスを指すことが多いです。味わいの場合は、「硬い質感」みたいなニュアンスで使われることが多いですね。金属的な味、塩っぽい風味などを表現するときに使われることもあります。
ミネラル感の感覚を知りたいなら「硬水のミネラルウォーター」を飲んで見ることや。日本の天然水(=軟水)に比べて、なんか硬くて重い味を感じるはずやで。あれがミネラル感ってやつやな。
4. ピノ・ブラン
ピノ・ブランは、フランス・アルザス地方原産のブドウ品種です。フランス・ドイツ・オーストリア・イタリアなど、ヨーロッパを中心に栽培されています。
赤ワイン用ブドウ品種「ピノ・ノワール」のクローン(突然変異種)で、ピノという名前は「松」を意味します。小さく実が密集したブドウの房が松ぼっくりに似ていることから、その名がついたと言われています。ピノ・ノワールは「黒いピノ」、ピノ・ブランは「白いピノ」という意味ですね。
ピノ・ブランは、実が小さくて果皮が薄いブドウ品種です。多くの場合、早飲みタイプのフレッシュでフルーティーな辛口白ワインに仕上げられます。また、スパークリングワインの原料に使われることもあります。
ピノ・ブランは、イタリアでは「ピノ・ビアンコ」、ドイツやオーストリアでは「ヴァイスブルグンダー」と呼ばれています。
5. ピノ・グリ
ピノ・グリは赤ワイン用ブドウ品種「ピノ・ノワール」のクローン(突然変異種)で、主にフランス・アルザス地方やイタリアで栽培されています。ちなみにイタリアでは、ピノ・グリージョと呼ばれています。「グリ」は灰色のことで、果皮の色がやや灰色がかったピンク色・青紫色になることからその名がついたと言われています。
ピノ・グリは糖度が上がりやすいブドウ品種のため、アルコールのボリューム感が強く飲みごたえがあるワインに仕上がります。また、その特性を利用して、辛口ワインだけでなく遅積みの甘口ワインも造られています。
アルザスの「ピノ・グリ」とイタリアの「ピノ・グリージョ」のワインでは、味わいに明確な違いがあります。ピノ・グリは黄色いフルーツの甘い香りが支配的で酸味も控えめ、芳醇な味わいのワインです。一方のピノ・グリージョは、柑橘系フルーツや白い花の爽やかな香りが強く、酸味もしっかりめでフレッシュ&フルーティーな味わいのワインになります。
6. ゲヴュルツトラミネール
ゲヴュルツトラミネールは、非常にアロマティックな香りのワインを生むブドウ品種で、果皮がピンクがかっているのが特徴です。主にフランス・アルザス地方やドイツ、オーストリア、イタリアなどで栽培されています。
ゲヴュルツとは「スパイス」の意味です。イタリアやオーストリアで栽培されている「トラミナー」というブドウの突然変異種とされており、「スパイシーなトラミナー」の意味からゲヴュルツトラミネールと名付けられました。
ゲヴュルツトラミネールのワインは、非常に香り豊かで独特の風味をもっています。全体的にフルーツの甘い香りがするのですが、特に顕著なのはライチの香りだ言われています。また、スパイシーと名がつくだけあって、コリアンダーや白檀・お香のような香りが現れることもあります。
アルザス地方では、辛口ワインだけでなく遅積みや貴腐による極甘口ワインも造られています。
7. ミュスカ
ミュスカはフランス・アルザス地方を中心に、イタリアやスペイン、ドイツ、他にも世界中で栽培されているブドウ品種です。日本ではおなじみの「マスカット」ですね。
イタリアでは「モスカート」、スペインでは「モスカテル」、ドイツでは「ムスカテラー」などと呼ばれています。
ワインに使用されるのは、「ミュスカ・ブラン・プティ・グラン」という品種です。病害に弱くデリケートなブドウ品種のため、安定した収穫量を得るのが難しいとされています。
ミュスカのワインは辛口から甘口まで造られていますが、どちらかと言えば甘口の方が人気があります。特にイタリア・ピエモンテ州の「モスカート・ダスティ」や「アスティ・スプマンテ」などは、マスカット本来のジューシーな果実味と甘味、爽やかな酸味が感じられる素晴らしいワインです。
一方で、フランス・アルザス地方のミュスカは、基本的に辛口ワインです。
8. ヴィオニエ
ヴィオニエは、フランス・ローヌ地方北部が原産のブドウ品種で、とても香り豊かで個性的な味わいのワインを生みます。
一時は、その栽培の難しさや収穫量の少なさが原因で、絶滅しかけていました。しかし、ヴィオニエのワインがフランスの美食家から高い評価を受けたことや、ヴィオニエから造られる銘醸ワイン「シャトー・グリエ」がフランスの5大ワインに選ばれたことで、見事に復活。今では世界中の生産者の間で人気のブドウ品種となっています。
ヴィオニエの特徴は、アロマティックな香りです。先に紹介したゲヴュルツトラミネールと並んで、様々なフルーツの香りが感じられる芳醇な白ワインの代表格だと言えます。
また、ヴィオニエはブレンド用に使われることも多いブドウ品種なのですが、単体で造られたワインは非常に素晴らしい味わいです。ヴィオニエのワインが未経験という方は、まずフランス・ローヌ地方の「コンドリュー(ヴィオニエ100%)」を飲んでみてください。ヴィオニエというブドウ品種の特徴が最も掴みやすいでしょう。
9. シュナン・ブラン
シュナン・ブランは、主にフランス・ロワール地方や南アフリカで広く栽培されているブドウ品種です。シュナン・ブランのワインには、辛口から半甘口、甘口、極甘口と様々な種類があります。
シュナン・ブランは、ブドウ自体の個性が強くないニュートラルなブドウ品種です。そのため、生産地の気候や土壌、生産者のテクニックなどの影響で違った個性の味わいになります。シュナン・ブランは、飲むたびに違う表情を見せてくれる魅力的なブドウ品種と言えます。
酸が豊富なブドウ品種で、甘口のワインに仕上げてもしっかりと酸味があるバランスの良い甘口になります。
シュナン・ブランのワインは、基本的に早飲みタイプです。フランス・ロワール地方では数十年の熟成に耐えうる甘口ワインもありますが、基本的には買ってすぐ飲んで美味しいでしょう。南アフリカでは、日常的に楽しめるデイリーワインが造られています。
10. 甲州
甲州は日本固有のブドウ品種で、近年は世界的に高い評価を受けています。山梨県の甲府盆地がほとんどの栽培地を占めていますが、山形県や栃木県、一部の西日本地域でも栽培されています。生食用のブドウ品種でもありますが、ほとんどがワイン用に使われます。
甲州は基本的に、スッキリとした辛口の白ワインを生みます。しかし、生産者のスタイルや栽培方法・醸造方法によってスタイルが異なるブドウ品種です。
滓とともにワインを一定期間熟成させて旨味を強くする「シュール・リー」や、果皮の成分を強く抽出する「スキン・コンタクト」によるオレンジ色の外観をしたワイン、香ばしい香りがついた樽熟成タイプなど、そのスタイルは多岐に渡ります。
甲州のワインはデリケートで繊細な味わいなので、どんな料理にも比較的合わせやすいと言えます。他の国のワインではなかなか合わせにくい和食とも、非常に相性が良いです。
白ワイン用ブドウ品種の選び方
白ワインのブドウ品種を選ぶときは、以下の表を参考にしてください。
キリッとした酸味があってドライな辛口の白ワインが飲みたいときは、シャルドネ、リースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ブラン、甲州などのブドウ品種を選びましょう。
シャルドネは樽熟成の有無で酸味の質やコクが変わります。樽の風味が効いたコクのある白ワインが好きな方は、フランス・ブルゴーニュ地方の白ワイン(シャルドネ)や、カリフォルニアのシャルドネが良いでしょう。
リースリングも、産地によって辛口・甘口タイプに分かれます。甘口が好きな方は、ドイツのリースリングで探してみると良いでしょう。
酸味が控えめで、花のように華やかな香りの辛口白ワインが好きな方は、ヴィオニエやピノ・グリがおすすめです。同じようなタイプで少し甘い味が良いという人には、ゲヴュルツトラミネールをおすすめします。
酸味も甘辛度も中程度の口当たりが良い白ワインをお探しの場合は、シュナン・ブランの中辛口白ワインが最適です。ただしタイプによってはシュナン・ブランは酸味が強いタイプもあります。色々と飲み比べてみてください。
キリッとした爽やかな酸味がある甘めのワインが好きな人は、ミュスカの白ワインがベストです。
赤ワイン同様、これらはあくまで目安です。産地・生産者(製法)によって同じブドウ品種でも味わいが大きく異なります。色々試してみて、ぜひ自分の好きな味を発見してみてくださいね。
まとめ
今回ご紹介したブドウ品種を覚えておけば、自分の好みのワインを選べるようになります。
ただし同じブドウであっても、生産地や生産者が変われば、味わいもまた異なるものになります。そして、それがワインの面白いところでもあるのです。
ぜひ好奇心を持って、いろいろなブドウ品種のワイン、いろいろな生産地のワインを飲み比べてみてください。そのうち、「自分の好きな味はこれだ!」と、明確な基準ができるようになるでしょう。