酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)とは?種類や造り方・美味しい飲み方をソムリエが解説!


「酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)」ってどんなワインなんですか?

ほう…ぴのこちゃんもついに酒精強化ワインの世界に足を踏み入れるのか。どっぷりハマって抜け出せないようにしてあげよう。

なんか怖いわね…

たしかに酒精強化ワインには普通のワインにはない独特の魅力がありますからね。それでは今回は、酒精強化ワインの種類や造り方・美味しい飲み方をまとめて解説しましょう!
酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)とは?
酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)とは、ワインにブランデーやスピリッツ(蒸留酒)などを加えてアルコール度数を高くしたワインのことです。一般的なワインのアルコール度数が10%〜14%なのに対して、酒精強化ワインは15%以上あるため、味わいにコクがあります。
保存性に優れている点も大きな特徴です。通常のワインは温度・光・振動などの影響で味や香りが落ちてしまいますが、酒精強化ワインはこれらの外的要因で味が変容してしまうことはありません(とはいえ、蒸留酒ほど丈夫なわけではありませんが…)。
また、甘口に仕上げられることが多い酒精強化ワインは酸化にも強く、開栓後も味わいが長持ちします。タイプにもよりますが、開栓してから1ヶ月〜数ヶ月は美味しく飲めるでしょう。
そして何より、酒精強化ワインは長期熟成が可能です。世界三大酒精強化ワインのひとつ「ポート」の上級品には、100年以上の熟成にも耐えうるものもあります。
このように、同じワインというお酒でありながら、酒精強化ワインは通常のワインとは一線を画す存在と言えます。今回はそんな酒精強化ワインの魅力を解説します。
酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)の種類

代表的な酒精強化ワインには、以下のものがあります。
- シェリー
- ポート
- マデイラ
- マルサラ
- VDL
- VDN
シェリー(ヘレス)

シェリーとは、スペインのアンダルシア地方で造られる酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)です。英語名のシェリー(sherry)が一般的に知られていますが、スペイン語ではヘレス(Jerez)と呼ばれます。
この地方では、ワイン樽に入れたワインの液面にフロールと呼ばれる産膜酵母の一種が発生します。このフロールが、シェリーの風味を決定づける大きな要因です。
フロールが空気と触れるのを防いでワインを還元状態(=酸素に触れない状態)で熟成させるとともに、フロールの作用で独特の風味を持ったワインが出来上がります。
一方で、このフロールが発生しなかった樽(もしくは意図的にフロールを消失させた樽)のワインは、酸素に触れた状態で酸化熟成されます。通常のワインであれば酸化してダメになってしまうのですが、アルコール度数を高めてあるシェリーは酸化熟成がプラスに作用して、独特の風味を持った茶色いワインに仕上がります。

フロールと共に熟成させたタイプをフィノ、フロールが発生せず酸化熟成させたタイプがオロロソ。フロールと共に熟成していたが、何らかの原因でフロールが消失して途中から酸化熟成させるアモンティリャードなどが、代表的なドライタイプのシェリーです。
対して、モスカテル(マスカット)やペドロ・ヒメネスなどのブドウから造る極甘口タイプ、これらの甘口と先に紹介した辛口シェリーをブレンドして造る中甘口タイプなどもあります。
シェリーのタイプ | 甘辛度 | 特徴 |
---|---|---|
フィノ | 辛口 | 白ワインに近いドライタイプで、フロール(産膜酵母)由来の 独特の風味を持つ |
マンサニーリャ(マンサニーリャ) | 辛口 | フィノと同じタイプだが、より海に近いサンルーカル・バラメダ という地域で造られる。ほのかに潮の風味があると言われる。 |
アモンティリャード | 辛口 | 途中でフロールが消失したことにより、酸化熟成したタイプ。 フィノとオロロソの両方の風味を持つ。 |
オロロソ | 辛口 | フロールが発生せず酸化熟成させたドライタイプ。 紹興酒に似た味わい。 |
パロ・コルタド | 辛口 | オロロソの中でも、特に優れた風味を持つものに与えられる名称 |
ミディアム | 中甘口 | アモンティリャードをベースに、極甘口シェリーをブレンド。 甘味と酸味のバランスがちょうど良いシェリー。 |
クリーム | 甘口 | オロロソをベースに極甘口シェリーをブレンド。 ミディアムよりコクがあってリッチな甘味。 |
ペイル・クリーム | 中甘口 | フィノをベースに極甘口シェリーをブレンド。 すっきりとした爽やかな甘味が感じられる。 |
モスカテル | 極甘口 | マスカットから造られる極甘口のシェリー。 トロッとした甘味の中にフレッシュさがある。 |
ペドロ・ヒメネス | 極甘口 | ペドロ・ヒメネスから造られる極甘口ワイン。 トロトロの黒蜜のような質感と甘味。 |

シェリーの最大の特徴は、「ソレラシステム」っていう独特の熟成方法で造られることだよ。

ソレラシステム?

樽を3〜4段くらいに積み上げて、出荷する時の瓶詰めは一番下(1段目)の樽のワインで行なう。1段目の減った分は2段目の樽から補充する、2段目の減った分は3段目の樽から補充する。いわば、先祖代々ずっと注ぎ足してきたうなぎのタレみたいな熟成方法だね。


フィノやマンサニーリャは、なんといっても生ハムやオリーブなどスペインのおつまみと相性抜群です!オロロソやアモンティリャードは紹興酒に似た風味なので、中華料理に合わせて欲しいですね。甘口シェリーはチョコレートに合わせたり、バニラアイスクリームにかけたりしても美味しいですよ。

シェリーの造り方や味わいについてもっと詳しく知りたい人は、シェリーのプロ「べネンシアドール」の僕が解説した記事を読んでね。

ポート

ポートとは、ポルトガル北部のドウロ地区で造られる酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)です。美しいルビー色・琥珀色をしていることから「ポルトガルの宝石」と呼ばれています。
昔、日本には「赤玉ポートワイン」というお酒がありました。甘い味わいがポートワインに似ていることから、名付けられたものです。このことからも分かるように、甘口の赤ワイン=ポートワインといったイメージですが、実はポートワインにも様々な種類があります。
タイプ | 特徴 |
---|---|
ルビー・ポート | 3年ほどの樽熟成で出荷される、最もスタンダードな赤のポートワイン |
ホワイト・ポート | 3〜5年の樽熟成で出荷される、最もスタンダードな白のポートワイン |
トウニー・ポート | 10〜40年の樽熟成を経て瓶詰めされるスペシャルタイプ。琥珀色。 |
ヴィンテージ・ポート | 当たり年だけ造られる。20年ほどの樽熟成を経て出荷される、 ポートワインの中では最高級のスペシャルタイプ。 澱と共に瓶詰めされるため、飲むときはデキャンタージュが必要。 |
レイトボトルド・ヴィンテージ・ポート | ヴィンテージ・ポート同様に当たり年のみ造られるが、4〜6年ほどの 樽熟成で瓶詰めされる。気軽に飲める高級ポートワインの位置付け。 澱は取り除いて瓶詰めされるため、デキャンタージュは不要。 |

ポートワインって、甘口の赤ワインだけじゃなかったんですね!ところで、デキャンタージュって何ですか?

ワインを別の容器(=デキャンタ)に移し替える作業のことだね。空気に触れさせてワインの香りを開かせる目的、長期熟成で発生した瓶底の澱(オリ)と上澄みのワインを分離させる目的でするんだよ。


ポートはイギリス上流階級で広く愛されてきたワインだよ。「紳士の酒」とも言われてる。まさに僕のためにあるようなお酒だね!

どこがやねん

ポートはブルーチーズやデザートと合わせることが多いワインですが、葉巻との相性が抜群です。48年熟成のヴィンテージ・ポートと葉巻を飲んだことがあるのですが、一生忘れられない至福の時間になりましたね。
ポートワインについてもっと知りたい方には、こちらで詳しく解説しています。

マデイラ

マデイラは、ポートワインと同じくポルトガルで造られる酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)です。料理に使用されることが多いので、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
マデイラは北大西洋に浮かぶ島「マデイラ島」で造られます。発酵途中または発酵後に度数96%のブランデーを加えて、アルコール度数を17〜22%に調整したワインです。
マデイラが他の酒精強化ワインと決定的に違う点は、ブランデーを加えて酒精強化した後に「加熱する」点です。それによって、独特の香ばしい風味を持ったワインに仕上がります。
この製法は、大航海時代の名残です。その時代、アメリカ新大陸への航路途中にあるマデイラ島で積み込まれたワインが、赤道を横切って長い航海を終えると特有の風味をもつ素晴らしいワインへと変貌していました。本来はワインの品質を落としてしまうはずの高温による酸化熟成が、偶然にもマデイラワインに独特の風味をもたらしたのです。
この赤道を越える暑くて長い航海の間に起きたワインの酸化熟成を、加熱することで意図的に再現しているわけです。加熱処理しているマデイラは、開栓後も全くといって良いほど味が落ちません。開栓後の味の長持ちぶりは、酒精強化ワインの中でもピカイチと言えるでしょう。
マデイラはブドウ品種、製法・熟成方法によって、以下の通りに分類されます。
ブドウ品種 | ワインの色 | 特徴 |
---|---|---|
セルシアル | ゴールド | 標高600〜700mの涼しい地域で採れるブドウ。 キレの良い酸味を持った辛口のマデイラに仕上がる。 |
ヴェルデーリョ | オレンジゴールド | 標高400〜600mのやや涼しい地域で採れるブドウ。 燻製っぽい風味を持った中辛口のマデイラ。 |
ボアル | 琥珀色 | 標高300〜400mの暖かい地域で採れるブドウ。 香リ高い中甘口のマデイラに仕上がる。 |
マルヴァジア | 濃褐色 | 海岸近くの暑い地域で採れるブドウ。 ねっとりとした質感に甘口マデイラ。 |
ティンタ・ネグラ・モーレ | 主にブレンドに使われるブドウ。 |
タイプ | 特徴 |
---|---|
フラスケイラ/ガラフェイラ | 単一年・単一品種のブドウから造られる。 出荷するまでに、20年以上の樽熟成と2年以上の瓶熟成が義務付けられている。 |
コリェイタ | 単一年のブドウから造られるが、ブドウ品種は単一でなくても良い。 出荷するまでに5年以上の樽熟成が義務付けられているが、瓶熟成は不要。 |
レゼルヴァ | 熟成期間が5年のマデイラ。10年のものをスペシャル・レゼルヴァ、15年のものを エクストラ・リゼルヴァと呼ぶ。 |

マデイラ島といえば、サッカー選手のクリスティアーノ・ロナウドが生まれた島だね。

一年中暖かくて、トロピカルな花が咲き誇る美しい島です。「大西洋の真珠」とも称されるほどの、ヨーロッパ随一のリゾート地ですよ。こんな美しい島で生まれたマデイラワイン、飲んでみたくなりますよね!


セルシアルやヴェルデーリョなどの辛口タイプは、食前酒として冷やして飲むと良いよ。ソーダ割りなんかもおすすめ。ボアルやマルヴァジアなどの甘口タイプは、食後酒としてデザートに合わせると美味しいね!

甘口マデイラは葉巻との相性も良いですよ!
マデイラについてもっと詳しく知りたい方には、こちらの記事で詳しく解説しています。

マルサラ

マルサラは、イタリア・シチリア島の最西端「マルサラ」で造られるフォーティファイドワインです。マルサラは先に紹介したシェリー・ポート・マデイラとは全く異なる製法で造られます。
マルサラは以下の4つの材料を混ぜ合わせ、必ずオーク樽で熟成して造られます。
- 発酵が自然に止まるまで発酵させたワイン
- ワインを蒸留したブランデー(酒精強化用)
- ミステッラ:ブドウ果汁の発酵途中に②のブランデーを加え、発酵を止めて糖分を残した液体
- モストコット:ブドウ果汁を煮詰めたもの
原料となるブドウには、白ブドウのカタラッロやグリッロ、黒ブドウのネレッロ・マスカレーゼなどがあります。
マルサラは、残糖分によって呼び名が変わります。
呼称 | 残糖分 |
---|---|
セッコ | 辛口(残糖分=40g/ℓ未満) |
セミ・セッコ | 中辛口(残糖分=40〜100g/ℓ未満) |
ドルチェ | 甘口(残糖分=100g/ℓ以上) |
また、マルサラは熟成年数によって以下のように分類されます。
呼称 | 熟成年数 |
---|---|
フィーネ | 1年 |
スペリオーレ | 2年 |
スペリオーレ・リゼルヴァ | 4年 |
ヴェルジネ | 5年 ※上記材料の①と②のみを使う |
ヴェルジネ・ストラヴェッキオ | 10年 |

マルサラの本場シチリアでは、マルサラを素朴な焼き菓子と合わせたり、アイスクリームにかけて楽しんだりしますよ。
VDL
VDLとは「Vin de Liqueur(ヴァン・ド・リキュール)」の略で、フランスで造られるフォーティファイドワインです。基本的には発酵前のブドウ果汁にアルコールを添加し、樽またはタンクで熟成して造られます。アルコール度数は16〜22%ほどになります。
造られるワインは基本的に甘口であり、タイプとしては白・ロゼ・赤があります。
主なVDLの生産地は、コニャック地方・アルマニャック地方、ジュラ地方、ラングドック地方などです。


基本的に甘口のVDLは、食後酒としてワインだけで飲んだり、デザートと合わせたりすることが多いね。でも、料理と合わせてもいける。コニャック地方のVDLと蒸し牡蠣のマリアージュは最高だったよ!
VDN
VDNは、「Vin Doux Naturel(ヴァン・ドゥー・ナチュレル)」の略で、こちらもフランスで造られるフォーテォファイドワインです。タイプは白・赤・ロゼがあり、アルコール度数は18%前後のものが多いです。
VDNとVDLは似ていますが、両者の違いは「アルコールを加えるタイミング」です。
発酵前のブドウ果汁にアルコールを加えるVDLに対して、VDNはブドウ果汁の発酵途中にアルコールを加えます。糖分が残っている状態で発酵が止まるため、VDNも甘口のワインです。
VDNは主に南フランスのラングドック・ルーション地方で造られており、全生産量の9割を占めます。
まとめ
酒精強化ワイン(ファーティファイドワイン)には、通常のワインと違って個性的な味わいと独特の魅力があります。
「普通のワインにちょっと飽きたな…」という方は、ぜひ酒精強化ワインの世界へ飛び込んでみてください。きっと新しい発見があるはずです。


