シェリーとポートの違い。酒精強化ワイン初心者が飲むならどっち?

ぴのこシェリーとポートってどんな違いがあるんですか?同じ酒精強化ワインだから、似たようなものかなと思ってたんですけど…。
きむシェリーとポートは個性が全く異なるワインで、それぞれに特有の魅力があるよ。今日はシェリーとポートの違いを分かりやすく解説するね。酒精強化ワイン初心者の皆様がどっちを最初に飲むべきかも紹介するね!
酒精強化ワインとは、発酵の途中または発酵後にブランデーなどのアルコールを加えて、アルコール度数を高めたワインのこと。世界3大酒精強化ワインにシェリー・ポート・マデイラがある。
シェリーとポートの違い
シェリーとポートは同じ酒精強化ワインでありながら、明確にキャラクターが異なるワインです。それぞれの違いを、「産地」「造り方」「味」「飲み方」の面から解説します。
産地
「シェリー」は、スペインで造られる酒精強化ワインです。一方の「ポート」は、ポルトガルで造られます。
シェリーの産地「ヘレス」

シェリーは、スペイン南部アンダルシア州、大西洋へと注ぐグアダルキビール川の河口近くにある町「ヘレス・デ・ラ・フロンテラ」を中心に生産されています。この産地名に由来し、スペインではシェリーのことを「ヘレス(Jerez)」と呼ぶのが一般的です。
ヘレスは首都マドリードから飛行機でおよそ1時間南に下った場所にあり、緯度は東京とほぼ同じです。地中海性気候の影響を受け、年間を通じて比較的温暖な環境にあります。
人口約18万人のヘレスは、街の主要産業としてシェリー造りが根付いた地方都市ですが、F1サーキットを擁することや、騎手を育成する王立馬術学校があることでも知られています。また、フラメンコの中でも特に激しい曲種とされる「ブレリア」が生まれた土地でもあります。
シェリー用のブドウ畑は、グアダルキビール川とグアダレーテ川に挟まれた河口周辺一帯に広がっています。
なかでも優れた畑は「ヘレス・スペリオーレ」と呼ばれ、ヘレス・デ・ラ・フロンテラ、サン・ルーカル・デ・バラメダ、エル・プエルト・サンタマリアの3つの町を結んだ三角形のエリアに集中しています。大手のシェリーメーカーは、この三角地帯の中でも特に条件の良い区画を所有し、最高峰のシェリーを生み出しています。


ポートの産地「ポルト」
ポートワインは、ポルトガルの首都リスボンからおよそ300km北に位置する、同国第2の都市「ポルト」の街から出荷されるワインです。ポルトは、ユネスコ世界遺産にも登録されている歴史と文化に富んだ都市で、色とりどりの建物が立ち並ぶ美しい街並みでも知られています。

ポート用のブドウ畑は、ドウロ川の水面から少し高い場所から始まり、急斜面に沿って階段状の段々畑が広がっています。この規則正しく造成された急傾斜の畑により、水はけが良く、十分な日照を確保できるため、質の高いブドウが栽培されているのです。
また、ポートのブドウ畑には「カダストロ」と呼ばれる独自の格付け制度が存在します。各畑は、土壌、気候、ブドウ樹の状態という3つの観点から詳細に評価され、その合計点によってAからEまでのランクに分類されます。
大手のポートワインメーカーが造る製品には、主にAランクまたはBランクに格付けされた畑のブドウが用いられており、品質の高さを支える重要な要素となっています。

造り方
| 項目 | シェリー | ポート |
|---|---|---|
| 酒精強化のタイミング | 発酵終了後(辛口タイプ) 発酵途中(極甘口タイプ) | 発酵途中 |
| 発酵の扱い | 最後まで行う(辛口タイプ) 途中で止める(極甘口タイプ) | 途中で止める |
| 甘さの生まれ方 | 基本は辛口 辛口と極甘口をブレンド ブドウの甘味(極甘口タイプ) | ブドウの甘味 |
| 熟成方法 | ソレラシステム | 樽・瓶それぞれで熟成 |
| 熟成の考え方 | 味を均一化する手段 | 味を向上させる手段 |
| ヴィンテージの重要性 | 重要視しない | 非常に重要 |
| その他の特別要素 | フロール | ー |
シェリーとポートの最大の違いは、「アルコールをいつ加えるか(=酒精強化のタイミング)」です。
辛口シェリーはブドウを完全に発酵させた後にアルコールを添加しますが、ポートはブドウ果汁が発酵している途中でブランデーを加えて酒精強化します。
シェリーは、酵母が糖分をすべてアルコールに分解するまで発酵を続けます。その結果、辛口のワインができあがり、そこから酒精強化→熟成によって個性が付け加えられていくのです。
一方のポートは、アルコールを添加して酵母の働きをストップさせ、発酵を途中で終了させます。糖分が完全にアルコールに分解される前に発酵が終了するため、ブドウ由来の天然の甘味がワインの中に残るのです。その結果、甘味と果実味が一体となった濃厚な味わいになります。
シェリーにも甘口タイプはありますが、発酵を途中で止めることによる甘さではありません。シェリーは基本的に辛口で、甘口タイプのシェリーは辛口と極甘口(※)をブレンドすること生まれます。
まとめると、ポートは「造りの途中で生まれる甘さ」、シェリーは「後から設計される甘さ」だと言えます。
きむちなみに、極甘口シェリーはポートと同じく、発酵途中で酒精強化しますよ。
続いて熟成について触れます。
シェリーは、ソレラ・システムと呼ばれる独特の熟成方法が用いられます。これは古いシェリーの樽に新しいシェリーを少しずつ継ぎ足していく方式で、常に複数の年代のワインが混ざり合う熟成方法です。先祖代々、注ぎ足されてきたウナギのタレ方式みたいなものですね。

ソレラシステムは、常に均一の味わいのシェリーを出荷するために編み出された熟成方法です。
一方のポートは、樽や瓶で個別に熟成されます。それぞれのワインが独立して時間を重ね、味わいが向上していくのです。特に澱とともに瓶詰めされる最高級ポート「ヴィンテージポート」は、瓶内で100年近くも熟成していくと言われています。
ポートにおける熟成は、ブドウの果実味を守りながら深みを与えるための工程です。あくまでブドウの個性が主役であり、熟成はそれを補助する役割に近いと言えます。
一方シェリーは、熟成そのものが味を決定づける要素です。フロールと呼ばれる酵母の膜と共に熟成させることや、酸化熟成、ソレラ・システムなどによって、ヘーゼルナッツやコク・旨味のある複雑な味わいが形成されます。シェリーにとって熟成は、補助ではなく主役なのです。
最後に、ブドウの収穫年(ヴィンテージ)の重要性について。
シェリーは、ソレラ・システムによって複数年のワインが常に混ざるため、ヴィンテージの概念は基本的に重視されません。年ごとの違いよりも、常に安定した完成度を保つことが優先されます。
一方のポートは、ブドウの出来が味を左右するため、ヴィンテージが重視されます。特に、最高級の「ヴィンテージポート」は、ブドウの作柄が良い年にしか作れません。そのことからも、ポート造りにおいてはヴィンテージが非常に重要だと言えます。


味
辛口シェリー、極甘口シェリー、ポートの味わいをまとめてみます。
【辛口シェリーの味】
多くのシェリーは、甘さよりも香ばしさや旨味が印象に残る味わいです。ヘーゼルナッツ、パン(イースト香)、木の香り、時には出汁のような風味も感じられます。
・基本的にはフレッシュで軽快な味わい
・キレの良い酸味とドライな余韻
・酸化熟成タイプは旨味・コクが感じられる
・ほんのりアルコール由来の甘さ(グリセリン)も
【極甘口シェリーの味】
シェリーには、驚くほど甘い極甘口タイプも存在します。極甘口シェリーは、質感がとろりとしていて、黒蜜や干しブドウのような濃厚な甘さがあります。
・濃厚で強い甘味だが、単純に「甘いだけ」ではない
・コク・苦味・香ばしさが同時に感じられる複雑な甘さ
・フルーツ的な甘さというより、黒糖やカラメルのような甘さ
【ポートの味】
飲んだ瞬間にはっきり分かりやすい甘さを感じます。レーズンやベリージャムのような、果実由来の甘味と濃さが前に出てくる味わいです。
・甘さがストレートで分かりやすい
・果実味(フルーツ感)が強く、リッチでジューシーな甘味
・アルコール感もしっかり感じられる、飲みごたえある味わい
・まるでブドウジュースのような甘さ
きむ飲みやすさ&ジューシーな果実味と甘さを求めるならポート。香ばしさや旨味、個性のある味わいを楽しみたいなら辛口シェリー。最大級のコク&甘味を求めるなら極甘口シェリーです。
飲み方
辛口のシェリーは、食前に軽いおつまみと一緒に、または食事と共に楽しむのにふさわしいワインです。食前ならスペイン料理の前菜、たとえば生ハムやオリーブの実、魚介のマリネや海老のフリットなどをつまみながら飲むと最高でしょう。
また、シェリーはスペイン料理だけでなく和食や中華料理など、幅広い料理と合わせられるため、食中に飲むのもおすすめです。
一方、ポートは食後にチーズやデザートと共に楽しむのにふわさしいワインです。特にブルーチーズとの相性は抜群。チョコレート系のデザートとも美味しく合わせられます。
しかし、ポートの最上の楽しみは「ワイン単体で飲むこと」です。ゆったりとくつろぎながらポートのグラスを傾ければ、幸せな時間を過ごせるでしょう。そこに葉巻があれば完璧です。
極甘口シェリーも、ポートと同じような楽しみ方ができます。
食事と飲むならシェリー、ワインだけで楽しむならポートと覚えておいてください。
【結論】酒精強化ワイン初心者が飲むならポート!
酒精強化ワインをそれほど飲み慣れてない方が飲むなら、断然ポートがおすすめです。ポートが酒精強化ワイン初心者に向いている理由は、「わかりやすく美味しい」からです。
ポートには、レーズン・ドライプルーン・ダークチョコレート・シナモンなど、複雑でありながら分かりやすい香りがあります。また、濃厚かつリッチな甘味が心地よく、誰が飲んでも「美味しい」と感じられる味わいです。
一方のシェリーは、辛口から極甘口まで幅広いタイプがあるうえに、風味も独特です。気軽に飲んで楽しめるワインではありますが、好き嫌いが分かれる、どちらかといえば玄人ウケするワインだと言えます。
最初にシェリーから入って酒精強化ワインに興味をもつ人もいますが(私がそうでした)、ポートから入る方が酒精強化ワインの魅力に気づきやすいと言えるでしょう。
きむ酒精強化ワイン初体験という方は、次に紹介するソムリエ厳選ポートを、まずは飲んでみてください。
【これを飲めば間違いなし】おすすめポート3選
これを飲めば間違いなし!と自信をもっておすすめできるポートを厳選しました。
【初めてのポートワインに】ヴィニョス・ボルゲス ホワイトポート
ここまで読んで、「ポートワインって甘ったるそう」と思った方もいるでしょう。そんなイメージをいい意味で裏切ってくれるのが、このホワイトポートです。
ポートは基本的に赤ワインタイプ(ルビーポート)が多いのですが、こちらは白ワインタイプのポートです。やさしい甘さとすっきりした飲み心地で白ブドウ由来の爽やかさがあり、後味は軽やか。
「甘いお酒は好きだけど、甘ったるすぎるのは苦手」という人にもぴったりです。デザート代わりにはもちろん、食後に少しだけ楽しむ一杯としても心地よく寄り添ってくれます。
きむ「濃厚でどっしり重い」赤のポートと違って、このホワイトポートは「やさしくて親しみやすい」味わい。ポートワイン入門として、これ以上ない選択肢ですよ。
【王道の1本】グラハム ファイン・ルビーポート
「ポートワインを初めて飲むなら、まずはこの味を知ってほしい」。そんな王道中の王道ポートが、グラハムのファイン・ルビーポートです。
グラスに注ぐと広がるのは、熟したベリーやカシスのような甘い香り。ひとたび口に含めば、濃厚な果実味とやさしい甘さが一気に広がり、「難しいことは分からいけど、これは間違いなく美味しい」と素直に感じてもらえるでしょう。
渋みやクセも控えめで、口当たりはなめらか。甘口ワインにありがちな「もっちゃりした感じ」はなく、ライトに飲めるのも魅力です。
ブルーチーズやチョコレート系のデザートと合わせるのはもちろん、食後にそのまま一杯飲むだけでも、十分な満足感が得られます。
きむポートのことをよく知らなくても、理屈抜きに美味しいと感じられるはずです。
【ちょっと大人のポート入門】テイラー トウニーポート 10年
入門編ポートの中では、ちょっと大人向けのポート。それが「熟成年数表示トウニー」です。
ポートは熟成年数が長くなると酸化して、「トウニーポート」と呼ばれる褐色を帯びた複雑な風味のポートになります。異なる熟成年数のトウニーポートをブレンドし、平均熟成年数を割り出したものが「熟成年数表示トウニー」で、10年・20年・30年・40年があります。
テイラーのトウニーポート10年は、果実の甘さにナッツやキャラメルのような香ばしさが重なった、落ち着いた味わいが魅力です。甘口なのにどこかドライで、後味はすっきりとしています。
トウニーポートの特徴は、長い樽熟成によって生まれるまろやかさとコク。ルビーポートのようなフレッシュな美味しさではなく、時間を重ねたワインならではの深みが味わえます。
きむ食事と合わせるのではなく、食後にワイン単体で飲むのがおすすめ。
一日の終わりを贅沢な時間に変えてくれます。
