最近、シェリーを飲んだんですけど、美味しくてハマっちゃいそうです!味も香りもかなり個性的だったんですけど、どんなお酒なんですか?
シェリーのことなら、シェリーのプロ「ベネンシアドール」の資格をもつ僕に任せてもらおか。造り方・種類、美味しい飲み方まで徹底的に解説するで!
シェリーとは?
シェリーとは、スペインで造られるワインです。ただ、ワインと言っても普通のワインではありません。酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)という、アルコール度数を高めたワインです。
日本では、シェリーがワインであることは意外と知られていません。バーなどで氷を入れたロックスタイルで供出されているのをよく見かけます。他にも、カクテルの材料に使われたり小さいリキュールグラスで供出されたりするので、シェリーが蒸留酒やリキュールだと思っている人も少なからずいるのではないでしょうか。
シェリーってワインだったんだ。そういえば、私の祖父がレストランで食前にシェリーをよく飲んでたんだけど、シェリーは食前に飲むものなの?
年配の方で食前にシェリーを飲む方は多いで。これは昔、日本にフランス料理の文化が入ってきた時に、「魚には白ワイン・お肉には赤ワイン」の公式と一緒に「食前酒にはシェリー」の公式も入ってきたからやね。
もちろん、キリッとした辛口シェリーは食前酒にピッタリです。しかし、シェリーは辛口だけではありません。食事と合わせるのにふさわしいコクがあるタイプや、甘口タイプ・極甘口タイプなんかもあります。
シェリーは非常に奥深いワインなので、ぜひ本記事を読んでシェリーに興味を持ってもらえたら嬉しいです。
シェリーの産地「ヘレス」
ヘレスについて
シェリーは、スペイン・アンダルシア州、大西洋に流れ込むグアダルキビール川の河口にある「Jerez de la Frontera(ヘレス・デ・ラ・フロンテラ)」という町を中心に造られています。そのため、スペインではシェリーのことを「Jerez(ヘレス)」と呼びます。
ヘレスは、首都マドリードから南に飛行機で1時間ほどのところにあります。緯度は東京と同じくらいで、地中海性気候に恵まれた比較的温暖な町です。
ヘレスは人口18万人ほどのシェリー産業が中心の小さな町ですが、F1サーキットや騎手を養成する王立馬術学校があることでも知られています。また、フラメンコの中で最もとされる激しいとされる曲種「ブレリア」発祥の地でもあります。
「ウナ・コピータ(一杯飲もう!)」
シェリーはヘレスの人々の生活の一部です。彼らは、今では日本でもおなじみとなった「バル」でシェリーを飲みます。ヘレスのバルはカフェ兼バーのようなスタイルで、朝から晩までコーヒーやシェリーを初めとする様々なお酒が提供されています。
ヘレスの人々は、「ウナ・コピータ(シェリーを一杯飲もう!)」と誘い合い、コーヒーブレイク代わりにシェリーを飲み、ランチ前やディナー前なども気軽にシェリーを楽しみます。ちなみにコピータとは、ヘレスの伝統的なシェリーを飲むときの小さなグラスのことです。
シェリーを飲むときは、「タパス(小皿料理)」と一緒に楽しみます。タパスの定番は、オリーブの実やチーズ、野菜や魚介のマリネ、ジャガイモを揚げたもの、生ハム、魚や小エビのフリット、キッシュ、アヒージョなどです。タパスをつまみながらシェリーを飲み、そこから本格的な食事に入るのがヘレスの人々の食習慣です。
スペインバルのタパス、大好き!
タパスはスペイン語の「蓋をする(=タパ)」が語源やで。昔スペインのバルでは、ワイングラスにホコリやハエが入らないようにパンで蓋をしてたんや。そのパンの上にいろんな食材を乗せて食べるようになったのが、今ではおつまみ(小皿料理)に進化したってわけやな。
ヘレスの三角地帯
シェリーのブドウは、グアダルキビール川とグアダレーテ川に挟まれた河口一帯で栽培されています。
特に条件の良い畑は「ヘレス・スペリオーレ」と呼ばれ、3つの町(ヘレス・デ・ラ・フロンテラ、サン・ルーカル・デ・バラメダ、エル・プエルト・サンタマリア)を結んだ三角地帯にあります。大手のシェリーメーカーは、この三角地帯内のヘレス・スペリオーレの中でも特に良い区画を所有し、最高品質のシェリーを造っています。
ヘレスで良質なブドウが獲れるのは、「アルバリサ」という白い石灰質土壌のおかげです。アルバリサ土壌は、ヘレスの畑の85%を占めています。
ヘレスは1年のうち約300日は晴れており、年間降水量が約600mlほど(=東京の半分)です。しかも、雨が10月〜5月にかけてまとめて降るため、ヘレスのブドウは夏の厳しい暑さを雨無しで乗り切らなければなりません。
しかし、このアルバリサ土壌が5月〜10月の雨をスポンジのように吸収して土中に溜め、夏の雨が降らない時期もブドウに水分を供給してくれるため、ヘレスのブドウは枯れることなく育つのです。
シェリーを造るブドウ品種
シェリーのブドウ品種は、以下の3つです(全て白ブドウ)。
- パロミノ(パロミノ・フィノ、パロミノ・デ・ヘレスの2種類がある)
- モスカテル(モスカテル・デ・アレハンドリア、モスカテル・デ・チピオナの2種類がある)
- ペドロ・ヒメネス
シェリーのブドウ品種の中で最も重要なのがパロミノです。パロミノは、ヘレスのブドウ栽培総面積の約95%を占めています。
パロミノはこれといった個性がないニュートラルなブドウで、他のスペインのワイン産地ではそれほど重要視されていないブドウ品種です。しかしシェリー造りにおいては、パロミノの個性の弱さが反対に強みとなります。シェリーはブドウの個性ではなく、その後の醸造・熟成過程で味が決まるワインであるため、ニュートラルな味わいのパロミノが最も適しているのです。
モスカテルとペドロ・ヒメネスは、甘口シェリー用のブドウ品種です。モスカテルは、生食用でおなじみのマスカットのことで、フレッシュな酸味と濃厚な甘さを持つシェリーになります。
ペドロ・ヒメネスは栽培面積も少なく収穫量が少ないため、造られるシェリーも希少で高価なものになります。モスカテルよりもさらに濃厚で強烈な甘さと粘度をもつシェリーになります。
シェリー(辛口)の造り方
それでは、シェリーの造り方を見ていこか!辛口シェリーは、以下の手順で造られるで。甘口シェリーは少し工程が異なるから、後ほど説明するわ。
- ブドウの収穫
- プレス
- 発酵
- フロールの発生
- シェリーの分類と酒精強化
- ソレラシステムで熟成
- 出荷
①ブドウの収穫
ヘレスのブドウは、だいたい9月上旬頃から収穫が始まります。基本的には、糖度計で十分な糖度があると判断されたときに収穫が始まりますが、古い醸造家などは実際に自分でブドウを食べて判断することもあります。
ヘレスのブドウは、基本的に手摘みで丁寧に収穫されます。昔からブドウの収穫を請け負っている一家や、学生アルバイトなどが総出で収穫を行います。
②プレス
収穫されたブドウはプレス工場にトラックで運ばれ、除梗破砕機にかけられます。ここで、ブドウ果実の柄の部分を取り除き、軽く実を砕きます。
除梗・破砕されたブドウをプレス機に移し、果汁を搾ります。最初は圧力をかけずに、ブドウの重みだけで自然と流れ出たフリーランジュースを取り、その後は少しずつ圧力をかけて果汁を搾っていきます。
シェリー造りに使うのは、最初のフリーランジュースと、少しの圧力をかけて搾った良質な果汁のみです。強く圧力をかけて搾った果汁は質がそれほど良くないため、蒸留用に使われます。
昔は、ラガールっていう大きな木桶にブドウを入れて、底に釘を打った革靴を履いた男性が足で踏んでプレスしてたんや。今では最新のプレス機が使われてるから、秋祭の儀式で見れるくらいやけどな。でも、その頃の名残で、今でもシェリーのプレス工場はラガールって呼ばれてるんやで。
③発酵
プレスされた果汁は澱(オリ)を取り除き、ステンレスタンクで発酵の工程に入ります。
発酵が始まって2〜3日で、ブドウ果汁の糖分のうち90%がアルコールに変わります。その後、1ヶ月ほどゆっくり時間をかけて、残りすべての糖分をアルコールに変えます。そうしてアルコール度数11〜12%の白ワインができあがります。
ここまでは一般的な白ワインの醸造工程と同じなのですが、シェリーが普通のワインの造り方と違うのはここからです。
④フロールの発生
発酵が終了したワインは、11月頃まで静かに寝かされます。すると、ワインの表面にカッテージチーズのようなモロモロした膜が出現します。この膜が、シェリーを唯一無二のワインにする最大の要素「フロール」です。
フロールは産膜酵母の一種で、ヘレスや他のいくつかの地域でしか発生しない珍しいものです。通常、産膜酵母が発生したワインは失敗作とみなされるのですが、ヘレスの地ではフロールが良い方向に作用して、素晴らしい風味をもったワインになります。
ちなみに「フロール」の名前の由来は、この産膜酵母が「花のように浮かんでくるから」という説と、「花が咲く春と秋に活発に活動するから」という説かあるで。
⑤シェリーの分類と酒精強化
フロールが発生してから、シェリー造り独特の工程に入ります。まず、フロールの下のワインを試飲します。色が淡く繊細な味わいのものは、「フィノ」というタイプに分類され、フィノに分類したワインよりも色が濃く味わいもしっかりしたものは「オロロソ」というタイプに分類されます。
このタイミングでアルコール度数を高める酒精強化が行われます。一般的に酒精強化には、グレープスピリッツ(=ブドウの蒸留酒)とワインを半々で混ぜたものが使用されます。
フィノに分類されたものは、アルコール度数を15%まで酒精強化します。一方のオロロソに分類されたものは、アルコール度数を17%まで酒精強化します。
フロールは、アルコール度数15%ほどで最も活発に活動します。そのため、15%まで酒精強化されたフィノは表面にフロールの膜が張ったまま熟成することになります。
フロールはワイン中の成分を栄養に呼吸をしながら生きているのですが、それと引き換えにワインに独特のイースト香を与えてくれます。
あと、フロールがバリアになってワインが空気に触れるのを防いでくれるから、フレッシュな風味と淡い色合いが保たれるんやで。
一方、17%までアルコール度数を上げたオロロソはフロールが消滅します。アルコール度数17%では、フロールが生きていけないためです。フロールが膜を張らないオロロソは空気に触れて酸化し、色は琥珀色になり、香りや味わいも深く力強くなっていきます。
普通のワインは酸化したらダメになってしまうけど、酒精強化してアルコール度数が高くなってるシェリーは、酸化さえも良い作用にしてしまうんや。
⑥ソレラシステムで熟成
タイプを分類されて酒精強化されたシェリーは、貯蔵庫(=ボデガ)で「ソレラシステム」と呼ばれる独特のシステムで熟成に入ります。
まず、その年に造られた新しいシェリーは、「ソブレタブラ」と呼ばれる樽に入れられます。ボデガにはシェリーが入った樽が3〜4段に積み上げられており、シェリーを出荷する際は必ず一番下の樽「ソレラ」から出します。
ソレラを空にすることは絶対にありません。一度に出す量は、多くても各ソレラの3分の1までです。ソレラの減った分は、一つ上の段の樽「第1クリアデラ」から補充します。第1クリアデラの減った分は、その上の第2クリアデラから補充し、第2クリアデラの減った分は第3クリアデラから補充します。
そして、一番上の樽を補充するときは、ソブレタブラのシェリーが使われます。シェリーは、このように新しいものと古いものをブレンドしながら熟成させていくのです。一部の例外を除いてシェリーのボトルに収穫年(ヴィンテージ)の表記がないのは、様々な収穫年のワインがブレンドされているためです。
ソレラシステムに加わった新しいシェリーは、上から下へと補充されていく過程で古いシェリーの風味を身につけながらソレラへと至るんや。そうすることで、同じ味わいのシェリーを安定して出荷し続けられるわけやな。
長年、注ぎ足しながら先代達の味を受け継いでいく「先祖伝来ウナギのタレ」みたいね!
⑦出荷
シェリーは、ソレラシステムの一番下の樽「ソレラ」から出荷すると説明しましたが、ソレラの数は千を超え、大手メーカーであれば万を超えることもあります。
全てのソレラのシェリーが、同じ風味に熟成していることはまずありません。そこで、ソレラから出したシェリーは大きなタンクに一旦集められ、味わいの均一化が図られます。この時に、輸出先の国の好みに合わせて甘味・香り・色・アルコール度数などが調整されることもあります。
この調整には、ブドウ果汁を煮詰める際に糖分が焦げついたもの(カラメルのようなもの)をブドウ果汁に加えて発酵させた、「ピノ・デ・コロール」というワインが使用されたりします。
その後、清澄・冷却処理・フィルタリングを行い、瓶詰め・出荷されます。
以上が辛口シェリーの造り方です。
シェリー(甘口)の造り方
モスカテルやペドロ・ヒメネスなどの甘口シェリーの造り方は、辛口シェリーの場合と少し異なります。主に異なる点は以下の2つです。
- プレスする前に天日で干す
- 酒精強化のタイミング=発酵途中で酒精強化する
辛口シェリーが、収穫したブドウをすぐにプレスするのに対し、甘口シェリーは収穫したブドウを天日干ししてレーズン状にしてからプレスします。そうすることで、非常に甘いブドウ果汁を得られるのです。
もうひとつ異なる点は、酒精強化のタイミングです。辛口シェリーが、発酵終了後にフロールが発生したタイミングで酒精強化するのに対し、甘口シェリーは発酵途中で酒精強化します。
アルコール度数が高くなると、アルコール発酵が途中で止まります。
アルコール発酵は、原料の糖分が酵母の作用でアルコールと炭酸ガスに分解される発酵のことやで。お酒はみんな、このアルコール発酵で出来てるんや。
発酵途中で酒精強化することで、ブドウ果汁内の糖分が全てアルコールに変わる前に発酵が止まります。そして、糖分が残ったままのアルコール度数が高い甘口シェリーができあがるというわけです。
その後は、辛口シェリーと同様にソレラシステムでの熟成に入り、十分に酸化熟成されてから出荷されます。
シェリーの種類
続いて、シェリーの種類を紹介するで。シェリーは全部で10種類もあるんや!知らんかったやろ。
- フィノ
- マンサニーリャ
- オロロソ
- アモンティリャード
- パロ・コルタド
- モスカテル
- ペドロヒメネス
- ミディアム
- クリーム
- ペイル・クリーム
①フィノ
辛口シェリーの中で最も繊細なタイプ。白ワインと同じような色合いで、フロールと共に熟成させているため鼻をツンと突く強いイースト香があります。
熟成年数3〜4年のものが一般的で、中には5〜6年熟成のボディがしっかりしたタイプもあります。規定のアルコール度数は15%〜18%ですが、世の中の低アルコール志向に合わせてか、15%で造られているものが多いです。
②マンサニーリャ
マンサニーリャは、三角地帯の一つ「サンルーカル・デ・バラメダ」の町で造られるフィノタイプのシェリーです。
ヘレスのフロールが夏と冬に薄くなるのに対して、サンルーカルのフロールの厚さは一年中安定しています。ワインが空気に触れるのを完全に防げるため、フィノよりもさらに色合いが淡く、フレッシュでソフトな風味に仕上がりますまた、サンルーカルが海辺にある影響で、マンサニーリャにはほのかな潮の香りがあると言われています。
規定アルコール度数は15%〜19%ですが、フィノと同じく最低度数の15%で造られるものが多いです。
③オロロソ
オロロソは、フロールなしで酸化熟成させたタイプのシェリーです。酸化の影響で深い琥珀色をしており、コクがあってまろやか。辛口ではありますが、グリセリンを豊富に含んでいるため製品によっては甘みさえ感じられるものもあります。
規定アルコール度数は17%〜22%とやや高めです。
オロロソは、紹興酒の味に似てるって言う人が多いな。たしかに味は似てるけど、オロロソには紹興酒に無いスッキリとした酸味があるで!
④アモンティリャード
フィノとオロロソの中間タイプが、アモンティリャードです。
もともとフィノとしてフロールと共に熟成させていたものが、何らかの理由でフロールが消滅し、途中から酸化熟成に変わったタイプです。淡い琥珀色で、フィノのイースト香・キレの良い酸味と、オロロソの酸化による深い風味・コクの両方を持ち合わせています。
最近では、途中でアルコール度数を上げてフロールを消滅させ、意図的にアモンティリャードを造っています。
規定アルコール度数は16%〜22%。熟成年数が長いアモンティリャードはアルコール度数が高い傾向にあります。
⑤パロ・コルタド
酸化熟成タイプのシェリーの中で、絶妙な風味を持つ樽のシェリーにだけ与えられる名称がパロ・コルタドです。
アモンティリャードの香りにオロロソのボディをもつスペシャルタイプと言われています。人工的に造ることができず、偶然に現れるのを待つしか無いため、非常に希少なシェリーです。
規定アルコール度数は17%〜22%。
ちなみに、パロ・コルタドとは「切られた棒」の意味です。かつてシェリー造りの職人「カパタス」が、シェリーを試飲してタイプを分類する際、樽にチョークで付けていた印に由来しています。
ほんとだ、パロ・コルタドは棒が切られてるように見える!
⑥モスカテル
モスカテルというブドウ品種から造られる極甘口タイプのシェリー。
次に紹介するペドロ・ヒメネスに比べると甘さは控えめで粘度も低め。マスカット由来の爽やかな酸味も感じられます。とはいえ、トロリとした口当たりの濃厚な甘さをもつデザートワインであることに間違いはありません。
規定アルコール度数は15%〜22%。
⑦ペドロ・ヒメネス
ペドロ・ヒメネスというブドウ品種から造られる、シェリーの中で最も甘いタイプです。黒に近い茶色をしており、プルーンエキスのようなトロトロの口当たりです。
黒糖や黒蜜のような香ばしさ・濃厚でリッチな甘さですが、酸味とのバランスが取れているため甘ったるいという感じではありません。この独特の味わいは、全ワインの中でも唯一無二の存在と言えます。ただ、生産量が少ないため、価格は他のシェリーに比べて高い傾向があります。
規定アルコール度数は15%〜22%。
⑧ミディアム
アモンティリャードをベースに、ペドロ・ヒメネスを加えて甘さを調整した中甘口タイプ。アモンティリャードと同じ淡い琥珀色をしており、優しい甘味が特徴的なシェリーです。
同等の甘さのシェリーで、スペイン語で「アボカド」「アモロソ」、英語で「ミルク」「ブラウン」「リッチ」などの名称で売られていたものもありますが、現在はあまり見かけません。
規定アルコール度数は15%〜22%。
⑨クリーム
熟成期間が長いオロロソをベースに、モスカテルやペドロ・ヒメネスなどの極甘口シェリーをブレンドした甘口タイプのシェリー。オロロソの豊かなコクに甘味が加わった、非常に優れた味わいです。
規定アルコール度数は15%〜22%。
クリームが登場したのは19世紀頃。それまでは「ミルク」っていう甘口タイプがあったんやけど、さらにリッチな味わいを求めて熟成期間が長いオロロソをベースに造られたんや。それを試飲したある女性が、「今までのがミルクなら、これはクリームだわ」と言ったことが名前の由来とされてるで。
⑩ペイル・クリーム
ペイル・クリームは、フィノの中甘口タイプです。「フィノではドライすぎる」という方向けに、シェリーメーカーのクロフト社が開発しました。甘さのレベルとしては、ミディアムと同じくらいです。
フィノをベースに、アモンティリャード、オロロソ、濃縮精留果汁(ブドウ果汁を濃縮して甘味を抽出した無色透明の液体)を加えて造られます。
規定アルコール度数は15.5%〜22%。
シェリーの美味しい飲み方
最後に、シェリーの美味しい飲み方を紹介します。
シェリーの飲み方
シェリーはワインなので、基本的にはそのまま(ストレートで)飲むのが最も美味しいです。
ただ、甘口・極甘口タイプなどはアルコール度数が高いものも多いため、氷を入れて飲むのもアリです。甘口シェリーは味わいの骨格がしっかりしているため、氷を入れても味がぼやけず美味しく飲めます。
シェリーの美味しい温度
シェリーもワインと同様に、美味しく飲める最適温度があります。
基本的なルールとしては、色が淡い「フロールと熟成タイプ」は低めの温度、色が濃い「酸化熟成タイプ」は高めの温度です。
シェリーのタイプ | 最適な温度 | 備考 |
---|---|---|
フィノ、マンサニーリャ | 7℃〜9℃ | ー |
ペイル・クリーム、ミディアム | 10℃ | ー |
クリーム | 13℃ | ー |
オロロソ、アモンティリャード | 13℃〜14℃ | ー |
モスカテル、ペドロ・ヒメネス | 15℃ | 10℃以下に冷やしても美味しい |
シェリーのグラス
シェリーは、基本的に小さめのワイングラスで楽しみましょう。
ベストなのは、「カタビノ」と呼ばれるシェリー専用グラスで飲むことです。カタビノは、ワインのテイスティング・グラスを一回り小さく細身にした形状のグラスで、シェリーの味わいを最も引き出してくれると言われています。
他にも、カタビノをさらに一回り小さくした「コピータ」や、ウイスキーのショットグラスのような形の「カーニャ」といった専用グラスもありますが、日本では入手困難かもしれません。
シェリー専用グラスが手に入らない場合は、ワインのテイスティンググラス、小ぶりの白ワイングラス、シャンパン用のフルートグラスなどで代用すると良いでしょう。
シェリーと合わせる料理
シェリーはそれだけで飲んでも美味しいのですが、食事と合わせることで相乗効果が得られ、より美味しく感じられます。スペイン生まれのワインですが、スペイン料理だけでなく和食・洋食・中華など、幅広く合わせられるのもシェリーの魅力と言えるでしょう。
シェリーのタイプ | よく合う料理 |
---|---|
フィノ、マンサニーリャ | 生牡蠣や魚介のフリットなど魚介料理のオードブル全般 寿司、天ぷら、寄せ鍋などの和食 中華料理の前菜 ホワイトアスパラガスを使った料理 生ハム |
アモンティリャード | 酢豚・エビチリなど、中華料理全般 コンソメスープ、フカヒレスープなどに数滴垂らして 青魚を使った料理 串カツなどの揚げ物 |
ミディアム | スパイシーな味付けの辛いエスニック料理、中華料理 オイスターソースを使った中華の炒め物 |
オロロソ | 中華料理全般 赤身肉やジビエ料理 豚の角煮、味噌味など濃い味付けの和食 ハードタイプの熟成チーズ |
ペイル・クリーム | スパイシーな味付けの辛いエスニック料理、中華料理 フォワグラ料理 フレッシュフルーツ 軽い甘さのデザート |
クリーム | デザート全般 レーズンバター 濃厚な甘さを持つトロピカルフルーツ クセの強いブルーチーズ、ウオッシュタイプのチーズ |
モスカテル、ペドロ・ヒメネス | チョコレート系のデザート全般 バニラアイスクリームにかけて クセの強いブルーチーズ、ウォッシュタイプのチーズ |
まとめ
シェリーは辛口・甘口・極甘口とバラエティに富んだワインです。また、食前酒としてだけではなく、食中酒や食後酒としても楽しめる、非常にポテンシャルが高いワインです。
酒精強化していることによって、ワインに比べて開栓後も味わいが長持ちするうえに、わりとリーズナブルに買えるのも嬉しい点です。
まだシェリーを飲んだことがないという方は、ぜひシェリーの世界に足を踏み入れてみてください。きっと、他のワインでは味わえないその魅力にハマってしまうことでしょう。