京都・祇園のフレンチ「祇をん 尚」のイベントで、ローヌワインと料理の美味しさに完全ノックアウトされた私と仕事仲間のカルロスさん。
前編はこちら
いよいよメインのワインと料理の登場です。
コルナス ドメーヌ・ド・サンピエール 1999 (ポール・ジャブレ)
メインのワインは、コルナス ドメーヌ・ド・サンピエール 1999(ポール・ジャブレ)。
こんな良いワインをグラスワインで飲めるのか…
尚一郎さんのこのイベントにかける気合が伝わってきます。
【コルナス ドメーヌ・ド・ラ・サンピエール 1999(ポール・ジャブレ)】
・生産地:コート・デュ・ローヌ北部
・原産地呼称:コルナス
・生産者:ポール・ジャブレ・エネ
・ブドウ品種:シラー100%
・生産年:1999年
<特徴>
ジャムのような甘いベリーの香りに黒胡椒などスパイス、干肉のような動物的な香りも。シラー100%の力強い風味や渋味も熟成により丸く柔らかに。まさに飲み頃!
ローヌ地方の赤ワイン作りには、主にシラーというブドウが使われます。しかしこのシラー100%でワインを作ると大変力強い長期熟成向けのワインになるため、若いうちから楽しめるように数種類のブドウをブレンドしてバランスを取ることが多いのです。
そんなローヌワインの中にあって、シラー100%で作られるのが「コルナス」です。若いうちは固い味わいなのですが、熟成するとそれはもう素晴らしいワインになります。
ポール・ジャブレ・エネはコート・デュ・ローヌを代表するワイナリー。私も26歳のフランスワイン研修でこのポール・ジャブレ・エネを訪れて以来、大好きなワイナリーです。
ローヌワインを初めて飲むなら、ポールジャブレのワインを飲めば間違いないでしょう。コルナス以外にもたくさんの種類のローヌワインを作っていますが、どれを飲んでも美味しい、それほど信頼できる生産者です。
さて、そんな熟成コルナスに合わせた料理は「シストロン産 仔羊 背肉のロティとレギューム・ファルシ」。
シストロン産仔羊は、世界的に評価が高いプロヴァンス地方の仔羊です。羊肉とシラーはそもそも相性が良いとされているのですが、熟成したシラーとの相性はまた別格です。
これには羊肉大好きのカルロスさんもご満悦。
ゲストであるカルロスさんには食べやすいお肉だけの部分を、私には骨つきの部分を出してくれました。こういう細かい気遣いも、さすが「祇をん 尚」ですね。
このような気遣いは、特にカップルのお客様には喜ばれるのでしょう。男性の前で口まわりと手をベタベタにしながら骨つき肉にかぶりつくのは、女性としてはためらわれるでしょうから。
オジ二人組にもかかわらず決してサービスの手を抜かない尚一郎さんのホスピタリティに脱帽です。
ちなみに私は、何のためらいもなく口まわりと手をベタベタにして骨つき肉にかぶりつくような女性が好きです。
コンドリュー・シェリー 2021(アンドレ・ペレ)
デザートの前にチーズがありました。
チーズに合わせたワインはこちらです。
【コンドリュー・シェリー 2021(アンドレ・ペレ)】
・生産地:コート・デュ・ローヌ北部
・原産地呼称:コンドリュー
・生産者:アンドレ・ペレ
・ブドウ品種:ヴィオニエ100%
・生産年:2021年
<特徴>
熟した柑橘系フルーツ、白いスミレ、白桃の甘い香りなどが特徴的。酸味は丸く穏やか、アルコール分によるコク・ボリューム感もありながら非常にバランスの良い味わい。
ここでコート・デュ・ローヌを代表する白ワイン「コンドリュー」の登場です。ローヌワインは初めてという方も、ぜひこのコンドリューというワイン名は覚えていただければ!
コンドリューは「ヴィオニエ」というブドウ品種100%で作られます。ヴィオニエは他にもオーストラリアやアメリカの産地でも作られていますが、生産者はそれほど多くはありません。その理由は、ヴィオニエの栽培の難しさにあると言われています。
アンドレ・ペレは前編に登場した白ワイン「サンジョセフ」と同じ生産者ですが、彼らの真価はコンドリュー。コンドリューの中でも最高品質のブドウができる畑「コート・ド・シェリー」から生まれるこの希少なワインは、一度飲んだら虜になること間違いなしでしょう。
力強い味わいのワインなので、そのままデザートと一緒にいただきます。
カトー・マルジョレーヌは、アーモンドやヘーゼルナッツの粉末をたっぷり使った生地に、バニラ、プラリネ(=ナッツ系)、チョコレートのクリームを挟んだケーキです。フランスの三つ星レストラン「ラ・ピラミッド」が考案したデザートですね。
「祇をん 尚」のシェフはデザートも一級品です。
最後までワインと料理を心ゆくまで楽しみました。
26歳の私を思い出した素晴らしい夜になりました
尚一郎さんのおかげで、26歳の頃にコート・デュ・ローヌを訪ねた時のことを思い出しながら、とても楽しい時間を過ごせました。
26歳の私は曲がったことが大嫌いで、ソムリエの上司とぶつかることもしばしば。夢と理想に燃えていました。
いつしか心は汚れて煩悩にまみれ、要領よく立ち回り、理想よりも現実を語る人間になってしまいました。あの頃の私が今の私を見ると、どう思うでしょうか。
「大人になるとはそういうことだよ…」
26歳の私にそう呟いて、大いなる満足感とかすかな空虚感を胸に「祇をん 尚」を後にしました。
宝くじでも当てたんかぐらいニコニコの笑顔で見送ってくれる尚一郎さん。
あなたはいつまでもピュアで少年のような人です。いつもありがとう。