シャネルが所有するワイナリーを紹介!シャネルのワインは日本でも買える?

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女性が憧れるハイブランド「シャネル」。

シャネルはワイン事業にも参入しており、フランスとアメリカ・カリフォルニア州に複数のワイナリーを所有しています。シャネルに限らず、エルメスやルイ・ヴィトン(正確には親会社のモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)などもワイン事業を営んでいることから、どうやらハイブランドとワインには密接な関係がありそうです。

本記事では、シャネルが所有するワイナリーの紹介に加えて、シャネルとワインの関係や、シャネルがワイン事業に参入した背景を考察します。
注:客観的事実に基づいた個人の考察が入ります。シャネルの意図とは異なる可能性もありますが、ご了承ください

目次

シャネルが所有するワイナリー

現在、シャネルが所有するワイナリーは以下の5つです。

  • シャトー・ローザン・セグラ(フランス、ボルドー地方)
  • シャトー・カノン(フランス、ボルドー地方)
  • シャトー・ベルリケ(フランス、ボルドー地方)
  • ドメーヌ・ド・リル(南フランス)
  • サン・スペリー(アメリカ、カリフォルニア州)

①シャトー・ローザン・セグラ

シャトー・ローザン・セグラのブドウ畑

シャネルが所有するワイナリーの中で筆頭格に挙げられるのが、フランスのボルドー・メドック地区にある「シャトー・ローザン・セグラ」です(以下、ローザン・セグラ)。

ローザン・セグラは、フランスのボルドー・メドック地区の格付けで「第2級」の、超一流ワイナリーです。
メドック地区の格付けについては後述

シャトー・ローザン・セグラのボトル

<ブドウ品種>
カベルネ・ソーヴィニヨン
メルロー
プティ・ヴェルド
カベルネ・フラン

<香り>
ブラックベリー、ブルーベリー、カシス、スミレ、バラ、タール、甘草、アニス、
チョコレート、インク、燻製肉 など

<味わい>
ジューシーで滑らかな果実味とともに、心地よいシルクのようなタンニン。
上品な酸味とミネラル感のバランスが良く、エレガントで華やか、女性的な味わい。

ローザン・セグラの歴史は、1661年、地元の名士「ガシー家」が所有するブドウ畑の一角を「ピエール・デ・メサレス・デ・ローザン氏」が購入したことから始まりました。

ローザン氏は下記で解説している「5大シャトー」をはじめ、複数のシャトーでマネージャーを務めた、1600年代を代表するワインの造り手でした。ガシー家の畑をローザン氏が購入したため、この畑は「シャトー・ローザン・ガシー」と呼ばれました。

その後、相続によりこの畑は2分割され、片方の畑はシャトー・ローザン・ガシーのまま、もう片方はその畑を所有することになったセグラ氏の名前から、「シャトー・ローザン・セグラ」と名付けられました。

当時のローザン・セグラは2級格付けながら、現・1級格付けの「シャトー・ムートン・ロートシルト」に匹敵する高評価を得ていたと言われています。しかし、20世紀後半になるにつれてローザン・セグラは経営難に陥り、それに伴ってワインの質が下がり、評価を落としていきました。

そのピンチを救ったのがシャネルだったのです。

1994年、シャネルのオーナー「ヴェルテメール家」が、ローザン・セグラの経営権を買収しました。そして、シャネルグループの傘下になったローザン・セグラは、シャネルの潤沢な資金とモノづくりの哲学を投入して改革を断行したのです。

シャネルによる改革のおかげで、かつての名声を取り戻しつつあるローザン・セグラ。近年は、まるでシャネルの美意識が反映されたかのような、女性的な「美しさ」と「気品」、そして「芯の通った強さ」を兼ね備えたスタイルへと変貌を遂げています。

特に2010年以降は評価がうなぎのぼりで、現在ローザン・セグラは「最も1級格付けに近い第2級のワイン(=スーパーセカンド)」として、高く評価されています。

【ボルドー メドック地区の格付け】

1855年のパリ万国博覧会の際に、ナポレオン3世の要請を受けて制定されたメドック地区独自のワインの格付け制度です。1級から5級まで、61のシャトー(ワイン)が格付けされています。

<1級格付けのワイン(=5大シャトー)>
1. シャトー・ラフィット・ロートシルト
2. シャトー・ムートン・ロートシルト
3. シャトー・ラトゥール
4. シャトー・マルゴー
5. シャトー・オー・ブリオン


しかし、この格付けは当時の流通価格をもとに制定されたうえに、これまで1度の変更があっただけでほとんど見直されていないため、必ずしも格付けと品質が比例しているわけではない点に注意が必要です。

余談ですが、 2009年ヴィンテージのシャトー・ローザン・セグラのラベルは、シャトー設立350周年記念の特別ラベルで、シャネルの超有名デザイナー「カール・ラガーフェルド氏」がデザインを手がけています。

シャネルのデザイナー「カール・ラガーフェルド」がデザインした、2009年ヴィンテージのシャトー・ローザン・セグラのラベル
シャネルのデザイナー「カール・ラガーフェルド氏」によるデザインラベル

②シャトー・カノン

コルク抜き、シャトー・カノンのワインボトル、グラスに注がれた赤ワイン

シャネルが所有するワイナリーの中で、先述のシャトー・ローザン・セグラと肩を並べるのが、ボルドー地方のサン・テミリオン地区にある「シャトー・カノン」です。

シャトー・カノンは、サン・テミリオン地区のワイン格付けにおいて「プルミエ・グラン・クリュ・クラッセB」とされています。サン・テミリオン地区の格付けについては後述

<ブドウ品種>
メルロー:75%
カベルネ・フラン:25%

<香り>
ブラックベリー、ラズベリー、チェリー、プルーン、スミレ、紫のバラ、オリーブ、
ブーケガルニ、なめし革、杉 など

<味わい>
豊潤な果実味と生き生きとした酸味、驚くほどキメ細かいタンニン。
エネルギッシュでパワフルさもありながら、品格があり洗練された味わい。

シャトー・カノンのワインボトル


シャトー・カノンは、海軍中尉だったジャック・カノンによって1760年に設立されました。1980年代には、サン・テミリオン産ワインの最高峰と評価されるほど、高品質なワインを造っていました。

しかし、1990年代に入ると品質が低下し、ローザン・セグラと同じく経営難に陥ります。1996年にシャネルのオーナー「ヴェルメテール家」がシャトー・カノンの所有者となり、セラーへの設備投資やブドウの植え替えなど、大改革を実施しました。

シャネルが実施した大改革によりシャトー・カノンの品質は向上し、近年ますます評価が高くなっています。特に2022年ヴィンテージのシャトー・カノンには、世界最高のワイン評論家と称される「ロバート・パーカー氏」が100点満点を付けたほど。

パーカーポイント100点を獲得したこともあって、シャトー・カノンはかなり入手困難になっています。「サン・テミリオンの最高峰ワイン」の名声を取り戻すのは、そう遠くない未来かもしれません。

【ボルドー サン・テミリオン地区の格付け】

サン・テミリオン地区のワインの格付けは、上記のメドック格付けが制定された100年後の1954年に制定されました。格付けは、「プルミエ・グラン・クリュ・クラッセA」「プルミエ・グラン・クリュ・クラッセB」「グラン・クリュ・クラッセ」の3つに分かれています。

以下、2022年時点。

<プルミエ・グラン・クリュ・クラッセA>
シャトー・パヴィ
シャトー・フィジャック


<プルミエ・グラン・クリュ・クラッセB>
シャトー・カノンなど、計12シャトー

メドック格付けが170年ほどたった今でもほとんど見直されていないのに対し、サン・テミリオンの格付けは定期的に見直しが行なわれています。また、流通価格で格付けが決まったメドックと異なり、実際の香りや味の官能検査によって決まるサン・テミリオンの格付けは、信頼性が高いとされています。

一方、これまで長年にわたって「プルミエ・グラン・クリュ・クラッセA」だったシャトー・シュヴァル・ブランやシャトー・オーゾンヌなどが、審査基準への疑問を理由に格付けから撤退するなど、審査の公平性を保つことがいかに困難かという問題はあります。

③シャトー・ベルリケ

シャトー・ベルリケは、上述のシャトー・カノンと同じサン・テミリオン地区にあるワイナリーです。1784年に設立された、サン・テミリオンで最も古いワイナリーの一つです。

サン・テミリオンの格付けにおいては、上から3番目の「グラン・クリュ・クラッセ」に格付けされています。

2017年にシャネルグループの傘下に入り、シャトー・カノンと同じ醸造チームがシャトー・ベルリケのワイン造りを手がけたことで、その品質はめざましく進歩しています。

シャトー・ベルリケのワインボトル

<ブドウ品種>
メルロー:65%
カベルネ・フラン:35%

<香り>
ブラックチェリー、ブルーベリー、プラム、ラズベリー、赤スグリ、バラ、スミレ、ローズヒップやハイビスカスなど香水のように華やかな香り。杉、リコリス、メルロー特有のキノコのニュアンスも。

<味わい>
深みのあるジューシーな果実味に、しっかりとした渋味。
肉厚な質感で複雑味に富んだスタイル。

④ドメーヌ・ド・リル

ドメーヌ・ド・リルは、南仏コート・ダジュール地方のポルケロール島にあるワイナリーです。シャネルはこのワイナリーを2019年に買収し、白ワインとロゼワインを手がけています。

ドメーヌ・ド・リルの歴史は、1910年、フランソワ・ジョセフ・フルニエが妻への結婚祝いにポルケロール島を購入したことに始まります。

フランソワはこの地で、牧畜や野菜栽培、ブドウ栽培などを始めました。1980年代に入ると、フランソワの孫セバスチャン・ル・ベールが、この地でワイン造りに人生を捧げます。

そして2019年、ワイン生産者として充実した人生を送ったセバスチャンは、このワイナリーをシャネルに託しました。

画像引用・ピーロート・ジャパン 公式サイト

ドメーヌ・ド・リルの白、ロゼそれぞれのボトル

2019年にシャネルがオーナーとなってから、ドメーヌ・ド・リルのワイン造りは、ローザン・セグラ、カノン、ベルリケの醸造チームがバックアップすることになります。それにより、ドメーヌ・ド・リルのワインの品質は飛躍的に向上しました。

そもそも、ドメーヌ・ド・リルのブドウ畑のポテンシャルは相当高いものがありました。シャネルは、「素晴らしいワインとは優れたテロワール(土壌)と、ワイナリーでの緻密な作業から生まれるものである」と、南フランスの地で証明したのです。

⑤サン・スペリー

サン・スペリーは1989年にアメリカ・カリフォルニア州で設立された、比較的新しいワイナリーです。100%自社畑のブドウからワインを造り上げており、細部にこだわった高品質なワイン造りが世界的に評価されています。

シャネルがサン・スペリーを買収したのは、2015年のことでした。シャネルはこのワイナリーで、カベルネ・ソーヴィニヨンの赤ワインと、ソーヴィニヨン・ブランの白ワインを手がけています。

シャネルが買収したことによるサン・スペリーの変化は、長期的な視点でワイン造りができるようになったことでしょう。

シャネルは豊富な資金力でサン・スペリーの設備や畑へ継続的に投資し、ブドウを育てる環境そのものを丁寧に整えました。これにより、毎年安定して質の高いブドウが収穫できるようになり、サン・スペリーのワインの味わいにブレが少なくなっています。

豪華絢爛なドレスではなく、「女性が美しく自由に動けるように」と男性の下着から着想を得てジャージー素材を取り入れたり、シンプルで洗練されたリトルブラックドレスを世に広めたシャネル。

この、派手さよりも完成度・品の良さ・機能美を重視するシャネルの哲学がサン・スペリーのワイン造りにも反映され、「パワフルな濃い味」よりも「毎日飲んでも飽きない洗練された味」が目指されるようになりました。

シャネルの買収によってサン・スペリーは高級路線に変わったのではなく、誠実で質の高いワインが確実に造れるワイナリーになったと言えます。それは静かな変化ですが、グラスを傾けたとき、確かに感じ取れる進化と言えるでしょう。

シャネルのワインは日本でも買える?

シャネルのワインは、流通量がそれほど多くないため入手困難ではありますが、日本でも普通に買えます。

特に評価が高い4ワイナリーの購入リンクを貼っておきますので、シャネルのワインの味を知りたい方はぜひ飲んでみてください。

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シャネルはなぜワイン事業に参入したのか

さて、ここからはシャネルとワインの関係や、ファッションブランドであるシャネルがワイン事業に参入した背景を考察したいと思います。(注:客観的事実に基づいた個人の考察が入ります。シャネルの意図とは異なる可能性もありますが、ご了承ください

ココ・シャネルのシャンパン愛

シャネルの創業者ココ・シャネルは、シャンパンをこよなく愛していたと言われています。

私は人生で二つの時にしかシャンパンを飲まない。恋をしている時と、していない時。

〜ココ・シャネル〜

この名言からは、ココ・シャネルがシャンパンを愛していたことだけでなく、ココ・シャネルの女性としての美しさ、強さ、そしてどんな時でも人生を楽しもうというポジティブな姿勢が感じられます。

ワインもファッションも、同じヨーロッパの伝統文化です。創業者が愛したワインの世界にシャネルが参入したのは、必然だったのかもしれません。

ラグジュアリーのもうひとつの表現

ワインとは単なる商業品ではなく、土壌(テロワール)・時間・職人技・創造性などを結集させたエレガントな芸術品です。

ワイン造りには、ブドウの栽培〜醸造〜熟成に至るまで、途方もない時間と労力がかかります。良いワインは良いブドウからしか生まれません。そして、そのブドウの質は土壌(=テロワール)で決まるとも言われています。

素晴らしいワインを生むのは最新技術によるところも大きいですが、やはり最後は職人の技と創造性次第です。そして、ワインができあがってから長い時間をかけて熟成させることにより、時代を超えてその味わいは向上します。

良い原料を使って、職人が長い時間をかけてその技と創造性を駆使してモノづくりをするのは、オートクチュール(高級仕立て服)にも通ずるものがあります。

シャネルがワイン事業に参入したのは、「ラグジュアリーブランドとしてのシャネルの哲学と、ワイン造りの哲学が共鳴したから」という理由もあったのではないでしょうか。

つまり、シャネルにとってはワイン事業も「ラグジュアリーの表現」であり、「時代を超える美・エレガンス・職人技・創造性」を表現するための手段なのではないかと考えられます。

シャネルのクラシックハンドバッグ(黒)
出典:CHANEL 公式サイト

顧客ロイヤリティを高める

シャネルが所有するワイナリーの中には、フランス・ボルドー地方の超一流シャトーがあります。シャネルが超一流ワインを手がけていることは、顧客ロイヤリティの向上に一役買っているはずです。

【顧客ロイヤリティ】
顧客が特定のブランドや店舗、商品・サービスに対してもつ、継続的な信頼や愛着のこと。リピート購入や推奨行動(口コミ)につながり、顧客満足度(CS)よりも長期的な収益との相関性が高いとされています。

シャネルが所有するワイナリーのワインは流通量が限られており、「選ばれた者のワイン」とも言える希少なものです。

これらの希少な自社ワインを顧客にプレゼントしたり、顧客向けイベントで供出したりすることは、「シャネルの贅沢な世界に属している」といった顧客の優越感や特別感を高めてくれます。

また、ワインは「単なるモノ」ではなく、食・時間・文化など「ライフスタイルを楽しむためのもの」です。シャネルがワイン造りを手がけることで、顧客は「シャネルが単なるファッションブランドではなく、洗練されたライフスタイルそのものを提案するブランドである」との認識が強くなります。

ファッションだけでなく、ワインを通じたブランドエクスペリエンスも提供することで、顧客にシャネルの世界観や価値観を五感で感じてもらうこと。そして、その体験から生まれる「好き」「愛着」「信頼」といった印象や記憶の積み重ねによって、顧客ロイヤリティを高める狙い。

それこそが、シャネルがワイン事業に参入した最も大きな理由ではないでしょうか。

事業投資

もちろん、シャネルが事業投資として、つまり儲けるためにワイン事業に参入した側面はあるでしょう。

もし顧客ロイヤリティを高めることだけが目的なのであれば、有名なシャトー・ローザン・セグラとシャトー・カノンを買収するだけで十分だったはずです。ところが、2019年には南仏コート・ダジュール地方の無名ワイナリー「ドメーヌ・ド・リル」を買収し、ワイン事業を拡大しました。

シャネルは、伝統的なボルドーの赤ワインに加えて南仏の白ワインやロゼワインにも手を広げ、自社ワインの多様化を押し進めたのです。また2024年には、ワイン販売事業者の大手「Lavinia」を買収し()、流通・販路における基盤強化を行ないました。

これらのことから、シャネルのワイン事業は単発の趣味的投資ではなく、将来を見据えた計画的かつ継続的な投資であり、「ワイナリーの買収 → 再建 → 品質・ブランドの確立 → 販売・流通網強化」という明確なロードマップが描かれた事業であることが分かります。

(※)シャネルによるLaviniaの買収

Laviniaは、フランスやスペインなどでワインショップを経営する大手ワイン・スピリッツ販売業者で、早くからeコマースにも注力していた企業です。

Laviniaの買収は、シャネルのファッション事業部ではなく、シャネルが所有するボルドーのワイン商「ユーリス・カザボン」を通じて行なわれました。この買収は、シャネルが自社のワイン事業を強化するために、Laviniaが有するeコマースの知見や販売ネットワークを活用することが目的だと言われています。

フランス伝統文化の保存・復活

シャネルが所有するフランスのシャトー・ローザン・セグラやシャトーカノンは、非常に歴史が古く由緒正しいワイナリーです。ただ、この両ワイナリーとも、20世紀後半には経営難に陥った時期がありました。

これらの歴史あるワイナリーがもし没落してしまえば、フランスのワイン文化にとっては大きな損失だったはずです。しかし、シャネルがオーナーになったおかげで両ワイナリーには潤沢な資金が投入され、新しいエリート醸造チームが結成され、時には畑のブドウを植え替えるような大改革まで行なわれました。

その結果、両ワイナリーは再び最上級ワインへと復活を遂げたのです。これは、シャネルがフランスワイン文化の損失を防いだとも言えます。

シャネルによる両ワイナリーの買収(=ワイン事業への参入)は、単なる事業投資やブランド価値を高める目的だけではなかったはずです。

同じフランスの伝統文化を担う企業として、「ワインの伝統と土地を守り、良質なワイン文化を未来へ継承する」という責任感・使命感から、シャネルがワイン事業に参入した側面もあるのではないでしょうか。

これは、昔からシャネルが駆け出しの芸術家や音楽家をパトロンとして支えたり、職人技術を継承するためにアトリエを傘下に収めたりしてきたことを考えれば、納得がいきます。

これらのワイナリーの再建には、とてつもない時間と労力とお金がかかっています。シャネルがそれらを惜しまず投資した「本気の姿勢」は、顧客のブランドに対する尊敬を高めることでしょう。

まとめ

シャネルは、ブランドに胡座(あぐら)をかいたワイン造りをしているのではなく、徹底した品質管理・テロワール(土壌)への敬意・サステナビリティへの取り組みなど、「真摯なワイン生産者」として機能しています。

近年では、シャトー・ローザン・セグラとシャトー・カノンが「オーガニック認証(※)」を取得するなど、環境や土壌への配慮も強めています。

シャネルのワイン事業は、「事業の多角化」「ブランド名貸しワイン」のようなライトなものではなく、伝統・職人技・持続性・エレガンスといったシャネルの哲学をワインという形で表現する、「本物のラグジュアリー事業」と言えるでしょう。

シャネルを愛している方の中には、これまでにシャネルが手がけるワインを飲んだ方もいらっしゃると思います。ただ、それがどれほど価値あるワインなのか、ご存知なかった方も多いのではないでしょうか。

シャネルのワインは、並のワインではありません。希少価値が高いのはもちろんですが、服やバッグと同じくらい真摯に情熱を傾けて造られた芸術品なのです。

特にシャネルを愛する皆様には、シャネルが手がけるワインをぜひ味わっていただきたいです。シャネル愛が深い皆様であれば、きっとワインの味からシャネルの哲学・世界観を感じ取っていただけることでしょう。

私はソムリエとして、フランスのワイナリーの危機を救ってくれたシャネルには、感謝と尊敬の念を抱きます。もしシャネルがオーナーになっていなければ、我々は今日、シャトー・ローザン・セグラやシャトー・カノンといった素晴らしいワインを味わえなかったかもしれないのですから。


(※)オーガニック認証
=化学的な農薬・肥料・除草剤を使わない農法で造られたワインとして、専門機関から認められた証

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この記事を書いた人

・飲食店の勤務経験12年(うち、ソムリエ9年)
・日本ソムリエ協会認定 ソムリエ
・C.R.D.O認定 公式ベネンシアドール
・2009年 JALUX WINE AWARD ファイナリスト

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