オレンジワインとは?造り方や流行の理由・美味しい飲み方をソムリエが分かりやすく解説!


最近オレンジワインにハマってるんです。すごく美味しくて気に入ってるんですけど、オレンジワインとは何なのか、イマイチよく分からずに飲んでて…。

オレンジワインは数年前から流行していますよね。ソムリエとしても扱うのがとても面白いワインです。でもたしかに、よく分からずに飲んでいるという方も多そうですね。

では今回は、「オレンジワインとは何か」をソムリエがわかりやすく解説します。造り方はもちろん、なぜここまで流行したのか、人気の理由や美味しい飲み方も紹介しますよ!
オレンジワインとは?
オレンジワインとは、白ブドウを原料にして赤ワインの醸造方法で造られたワインです。果皮や種子を果汁に漬け込んで発酵させることで、果皮や種子に含まれる成分が抽出され、独特の風味をもつオレンジがかったワインに仕上がりまます。
オレンジワインは、アプリコットやオレンジピールなどの爽やかな甘苦い香りに、赤ワインのような穏やかな渋味が感じられる独特の味わいです。白ワインでも赤ワインでもないユニークなワインとして、世界的に流行しています。

ちなみにオレンジワインは正式なワインの分類というわけではなく、イギリスのワイン商が2000年代に考え出した造語だよ。
オレンジワインの起源
オレンジワインの起源はジョージアという国にあリます。ジョージアは、8000年も前からワイン造りをしていた国です。
ジョージアでは伝統的に、「クヴェヴリ」と呼ばれる陶器の中に白ブドウ果汁と果皮・種子を一緒に漬け込み、それを土の中に埋めて発酵させる方法でワインを造っていました。この方法で造られたジョージアワインは美しい琥珀色をしているため、ジョージアでは「アンバーワイン」と呼ばれています。

ジョージアのアンバーワインは素晴らしいワインでしたが、ジョージアが旧ソ連の支配下にあった影響で、国際市場に出回ることはありませんでした。
そんな中、イタリアの「ヨスコ・グラヴナー」という生産者がジョージアワインに感銘を受け、1998年から同じような製法でオレンジワインを造り始めました。これが瞬く間にイタリアのワイン生産者の間で人気になり、今では世界中で造られるようになったのです。
さらに近年では、ジョージアワインが世界中に流通し始めたこともあり、オレンジワインは一般消費者にも身近なものになりました。イタリアをはじめとするヨーロッパの国々に加えて、オーストラリアやカリフォルニア、日本などの新世界でも造られています。
なぜオレンジワインは流行したのか

オレンジワインが世界的に流行した理由は、主に2つあります。
【オレンジワインが流行した理由】
・ワインに合わせにくい料理とも相性が良かったから
・ナチュラルワインブームに乗ったから
例えば韓国料理・タイ料理・四川料理など、辛くてスパイシーな料理に白ワインや赤ワインを合わせるのはなかなか難しいものです。しかしオレンジワインは、これらの一般的にワインとの相性が良くないとされる料理にもうまく合わせることができたのです。
今までにない斬新なマリアージュが実現できることに気づいた世界のトップソムリエたちは、こぞってオレンジワイン を扱い始めました。それにより、一般消費者にもオレンジワインが広く浸透するようになったのです。
一つの大きな理由は、オレンジワインが近年のナチュラルワインブームに乗ったことが挙げられます。ナチュラルワインといえば、酸化防止剤(=亜硫酸)の添加量が少ないことを一つの売りにしているワインです。
一般的に、白ワインは赤ワインのように「タンニン(=自然の酸化防止剤)」が含まれていないため、酸化防止剤を多めに添加しなければなりません。一方、果皮と種子を漬け込んで造るオレンジワインであればタンニンが含まれるため、通常の白ワインよりも酸化防止剤の添加量が少なくて済みます。
ナチュラルワインの生産者たちは、そこに目をつけました。自分たちの白ワインをオレンジワインとして造ることで、酸化防止剤の添加量が少ない白ワインとして売り出したのです。こうしてオレンジワインは、添加物が少ないワインとしてナチュラルワインブームに乗り、人気を博すようになったのです。

現在はナチュラルワインの生産者以外もオレンジワインを造るようになっているので、オレンジワイン=ナチュラルワインというわけではありませんよ。
オレンジワイン の醸造方法
オレンジワインは、白ブドウを原料にして赤ワインと同じ醸造方法で造られたワインです。下の図を見てください。赤ワイン・白ワイン・オレンジワイン、それぞれの造り方を簡単に表したものです。

白ワインは、白ブドウを破砕して果皮や種子を取り除き、果汁だけを発酵させることで透明なワインが出来上がります。
一方の赤ワインは、黒ブドウを破砕し、果皮や種子と一緒に発酵して醸(かも)します。それにより、果皮や種子に含まれる色素(=アントシアニン)や渋味(=タンニン)が抽出され、渋味がある赤ワインになります。
赤ワインと同様の醸造プロセスを白ブドウで行なうと、オレンジワインが出来上がります。ただし、白ブドウには黒ブドウの果皮のようなアントシアニンは含まれていません。代わりに黄色系の色素が抽出されてオレンジ色になります。また、白ブドウの果皮や種子にもタンニンが含まれているため、オレンジワインは渋味が感じられるのです。
オレンジワインに使用されるブドウ品種
オレンジワイン造りに使用されるのは、香りが豊かな「アロマティックなブドウ品種」や「酸味が強いブドウ品種」などが多いです。
まず、アロマティックなブドウ品種には、果皮に香りの成分が多く含まれています。オレンジワインは果皮を漬け込んで風味を抽出させるため、香りが豊かなブドウの方がワインに個性が生まれやすくなるのです。
また、オレンジワインは果皮や種子・茎と共に発酵を行うことも多く、茎に含まれるカリウムがブドウ果汁の酸と結合してワインの酸味が少なくなってしまいます。そこで、酸味が強いブドウ品種を使うことで、酸味とタンニンを兼ね備えた高品質かつ長期熟成が可能なワインを造ることが可能です。
【オレンジワインに使われるブドウ品種】
・アロマティックな品種=ゲヴュルツトラミネール、ヴィオニエ、ピノ・グリ など
・酸味が強い品種=ルカツティリ(ジョージアワインの品種)、リースリング、シルヴァネール、甲州 など
オレンジワインの産地
今や世界中で造られているオレンジワイン。オレンジワインの起源であるジョージアはもちろんですが、ジョージア以外にも注目すべきオレンジワインの名産地があります。
【オレンジワインの名産地】
1. フランス アルザス地方
2. イタリア フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州
3. オーストラリア
4. 日本
フランスのアルザス地方では、オレンジワイン造りに適しているアロマティックなブドウ品種(ゲヴュルツトラミネールやピノ・グリなど)が多く栽培されています。ナチュラルワインの生産者も多いことから、オレンジワインの名産地の筆頭として挙げられるでしょう。
イタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州は、ジョージアワインに感銘を受けてオレンジワインを世に広めた「ヨスコ・グラヴナー」や「ラディコン」などの生産者が名を連ねる、オレンジワインの名産地です。
オーストラリアにもナチュラルワインの生産者が多く、若い世代を中心に人気となったオレンジワインが多く造られています。日本はナチュラルワインブームにのって、オレンジワイン人気が高まり、その需要に応える形で甲州やデラウェアなどのブドウから高品質なオレンジワインが造られています。

オレンジワインの美味しい飲み方
最後に、オレンジワインの美味しく飲むためのポイントを紹介します。
グラス

オレンジワインにも、「白ワインに近いあっさりした味わいのもの」から「オレンジワイン特有のコクや渋味があるもの」まで、様々なタイプがあります。
前者は基本的には白ワイン用のグラス(=小ぶりなチューリップ型)で構いません。しかし、後者のタイプは、複雑な香りや強くコク・ボリューム感を楽しむために、大ぶりな赤ワイン用グラスで飲むのがおすすめです。
横に幅広いブルゴーニュ型のワイングラスや、シャルドネ用のグラス(左写真)などが適しているでしょう。
温度
オレンジワインは、白ワインよりも少し高めの温度で飲む方が美味しいです。白ワインと同じような温度(8℃〜10℃)で飲むと、渋味が際立ってしまううえに複雑な風味やコク・ボリューム感が感じられなくってしまうため、冷やしすぎには注意しましょう。
白ワインに近いライトなオレンジワインは10℃〜12℃、しっかりとした渋味やコクがあるフルボディのオレンジワイン は、12℃〜16℃くらいで飲むのがおすすめです。
合わせる料理
オレンジワインは、白ワインや赤ワインで合わせるのが難しいジャンルの料理でも、美味しく合わせられます。
例えば韓国料理・四川料理・タイ料理・インド料理など、スパイシーでオリエンタル(=東洋的)なジャンルの料理と合わせると、これまで経験したことがないマリアージュを楽しめるでしょう。
まとめ
- オレンジワインは、白ブドウを原料に赤ワインの醸造方法で造られたワイン
- オレンジワインは、ジョージアで伝統的に造られてきたアンバーワインが起源
- ジョージアのワインに感銘を受けたイタリアワインの生産者「ヨスコ・グラヴナー」が世界に広めた
- オレンジワインが世界的に流行した理由①は、ワインを合わせるのが難しい料理との相性が良かったから
- オレンジワインが世界的に流行した理由②は、酸化防止剤の添加量が少なくて済むオレンジワインがナチュラルワインブームに乗って広く受け入れられたから
- オレンジワイン造りには、アロマティックなブドウ品種や酸味が強いブドウ品種が適している
- オレンジワインの注目すべき産地は、フランスのアルザス、イタリアのフリウリ、オーストラリア、日本
- オレンジワインを美味しく飲める温度は、ライトなタイプは10〜12℃、フルボディタイプは12〜16℃
- オレンジワインを美味しく飲めるグラスは、ライトなタイプは小ぶりの白ワイングラス、フルボディタイプはブルゴーニュ型やシャルドネ専用の横に幅広い大ぶりのグラス
- オレンジワインは、韓国料理・四川料理・タイ料理・インド料理など、オリエンタル系の料理と相性が良い