貴腐ワインとは?定義や意味、特徴から造り方までソムリエが徹底解説!

ぴのこ最近すごく気になってるのが貴腐ワインなんです。すごく甘くて美味しいワインだと聞いたんですけど、一体どんなワインなんですか?
きむ貴腐ワインは、数あるワインの中でも「世界最高峰の甘口ワイン」と言われてるね。
しょうさんでは今回は、貴腐ワインとはどんなワインなのか解説しましょう。貴腐ワインの定義・意味・特徴から、味わい、造り方、美味しく飲むコツまで、ソムリエがわかりやすく解説します!
貴腐ワインの定義・意味・特徴
貴腐ワインとは、世界最高峰のデザートワインです。とろけるほど濃厚な甘さをもち、非常に高価なワインとして知られています。
貴腐ワインは、貴腐菌(ボトリティス・シネレア)というカビの一種が付着した完熟ブドウから造られます。

「腐」という文字や「カビ」という表現から、まるで人体に有害なように感じるかもしれませんが、決してそういった類のものではありません。
貴腐菌がブドウ果皮に付着すると、菌糸が果皮の組織を破壊してブドウの水分だけを蒸発させ、糖分や旨味を凝縮させます。こうして糖度が高くなったブドウを原料とするため、貴腐ワインは極甘口に仕上がるのです。
見た目はシワシワで腐ったように見えるが、中身は高品質で濃厚。つまり「見た目は腐敗、味は高貴」から「貴腐」という言葉が生まれたと言われています。
貴腐ブドウができる環境
貴腐ブドウができるには、ある特定の環境が必要です。
貴腐菌(ボトリティス・シネレア)がブドウの果皮に付着すれば、何でも貴腐ブドウができあがるというわけではありません。本来ボトリティス・シネレアは、「灰色カビ病」というブドウ樹の病害を引き起こす菌です。ただ、特定の環境で特定の条件を満たした場合にのみ菌が肯定的に作用し、貴腐ブドウを作ります。
ボトリティス・シネレアが貴腐菌として作用しやすくなる環境は、以下の通りです。
| 条件 | 理想の環境 | 詳細 |
|---|---|---|
| 温度 | 20℃〜25℃ | この温度かつ高湿度により、 貴腐菌が果皮に侵入・発育しやすくなる。 |
| 湿度 | 85%〜95% | 高湿度だけでは不十分。 その後、湿度60%以下へ乾燥することで、 ブドウがしぼんで糖分が濃縮される。 |
| 気象サイクル | 朝の霧、昼は晴天乾燥 | 「朝の霧(高湿度)」と「日中の乾燥・晴天」の反復が、 貴腐菌の侵入→果汁濃縮という理想的なサイクルを生む。 |
| 微気候 (=ミクロクリマ) | 川沿いや谷 | 朝に霧や湿った空気が生まれ、昼に日差しで乾燥する 川沿いや谷の斜面では、貴腐化しやすくなる。 |
貴腐ブドウは、これだけ多くの条件を満たした年だけにできる、まさに奇跡の産物だと言えます。
貴腐ワインの造り方
貴腐ワインは、通常のワインに比べて長い時間と多大な労力をかけて造られます。
- 貴腐ブドウの選果
- 破砕・圧搾
- 発酵
- 発酵停止・糖分の残留
- 熟成・清澄・瓶詰め
貴腐ブドウの選果
貴腐ワインの製造工程で最も手間がかかると言っても過言ではないのが、ブドウの収穫です。
一つの房において、全ての粒が同じタイミングで貴腐化するわけではありません。一つの房の中には「貴腐化して収穫できる状態の粒」「貴腐化しているもののまだ収穫タイミングではない粒」「まだ貴腐化していない粒」などが混在しています。

その房の中から、「貴腐化して収穫できる状態のブドウ」だけを選んで手摘みしなければならないのです。もし貴腐化していない粒も一緒に搾ってしまえば、ブドウ果汁全体の糖度が下がってしまいます。
つまり、そのブドウ樹に房が残っている限り、人の手で何度も収穫を繰り返さなければならないのです。それがどれだけの労力なのか、お分かりいただけるのではないでしょうか。
しょうさんちなみに、世界最高の貴腐ワイン「シャトー・ディケム」は、一つのブドウ樹から計13回も収穫すると言われています。
破砕・圧搾
貴腐ブドウは水分が極端に少ないため、強い力でゆっくりと圧搾する必要があります。レーズンを搾って果汁を得ることをイメージしていただくと良いでしょう。
得られたブドウ果汁は濃厚で甘く、粘性も非常に高いのが特徴です。
発酵
貴腐ワインの発酵は非常にゆっくりと進みます。ブドウ果汁の糖度が高く、アルコール醗酵する酵母の働きが弱くなるためです。
発酵には数ヶ月、場合によっては1年以上かかることもあります。
発酵停止・糖分の残留
一般的な貴腐ワインは、残糖分を多く残すために、アルコール度数が低い段階で発酵を止めます。(フランス・ボルドーの貴腐ワイン「ソーテルヌ」などでは、アルコール度数を13%以上まで上げます)。
これにより、「低アルコール度数➕濃厚な甘味」という貴腐ワイン特有のバランスが生まれます。
ただし、残糖分が多いにもかかわらずアルコール度数は低く抑えられているため、貴腐ワインは再発酵のリスクが高いです。そこで、発酵の中断およびその後の再発酵防止のために、貴腐ワインでは亜硫酸(酸化防止剤)を多めに添加します。
しょうさん亜硫酸(酸化防止剤)が多めと言っても、各国のワイン法で定められた基準内の量です。人体に有害な量ではありませんので、安心してくださいね。
熟成・清澄・瓶詰め

発酵を終えた貴腐ワインは、熟成の工程に入ります。基本的には樽で熟成されることが多く、新樽で熟成させるか、旧樽で熟成させるかは生産者次第です。
熟成の工程で、貴腐ワインは角が取れて丸くなり、はちみつやキャラメル、ヴァニラ、ナッツなど樽由来の香りを強化していきます。
その後、不純物などを取り除くために清澄され、瓶詰めされます。貴腐ワインは少量でも十分に楽しめるため、ハーフボトル(375ml)や500mlボトルに瓶詰めされることも多いです。
貴腐ワインが高価な理由
貴腐ワインは、通常のワインに比べて高価になる傾向があります。貴腐ワインが高価な理由は以下です。
- 原料が希少
- 収穫〜醸造に手間がかかる
- 生産量が少ない
貴腐ワインは、ボトリティス・シネレア菌が肯定的に作用して貴腐化したブドウだけを用いて造ります。極端な話、天候条件が揃わずブドウが貴腐化しなかった年は、貴腐ワインを1本も造れません。つまり、貴腐ブドウ自体が奇跡の産物であり、非常に希少なものなのです。
また、ブドウがうまく貴腐化したとしても、貴腐ブドウを一粒ずつ目視で選定し、手積みで収穫しなければなりません。また、貴腐ワインは糖度が高く発酵がゆっくり進むため、醸造に1年以上かかることもあります。収穫から発酵まで膨大な時間と労力がかかるのです。
そして、貴腐ワインが高価である最大の理由は、そもそもの生産量が少ないことです。貴腐ブドウは水分がほとんどないため、得られる果汁が極端に少なくなります。一般的な白ワインが1トンのブドウから150Lの果汁が得られるの対して、貴腐ブドウは1トンからわずか20Lほどの果汁しか得られません。通常のワインに比べて原料コストが非常に高いのです。
さらに、貴腐ワインの銘醸地では、ワイン法により収穫量や糖度について厳しい基準が設けられています。貴腐ワインは「量より質」が強制されているため、自然と価格は高くなりがちです。
きむまとめると、「奇跡的な自然条件 ✖️ 多大な時間的・労力的コスト ✖️ 極少生産」により、貴腐ワインは高価になっているということだね。
貴腐ワインとアイスワインの違い
ぴのこ甘口のアイスワインは、貴腐ワインとはまた違うものなんですか?
しょうさんアイスワインは、貴腐ワインと肩を並べるほど高級で希少な甘口ワインで、貴腐ワインと同じくらい甘いのですが、似て非なるものです。
アイスワインは、-7℃ 〜 -10℃以下で「ブドウが自然凍結した状態」で収穫します。この状態では、ブドウ内の水分は凍っていますが、水分よりも氷点が低い甘味やエキス分は凍っていません。凍ったままのブドウを圧搾することで、凍っていない甘味やエキス分のみが流れ出てくるため、非常に甘い果汁を得ることができるのです。

ジュースを凍らせて、常温に戻して少しだけ溶けた状態で飲んだら、通常のジュースよりも濃くて甘い味だったという経験はありませんか?それと同じようなイメージです。
この濃厚で甘いブドウ果汁をアルコール発酵させれば、貴腐ワインにも負けない極甘口ワインが仕上がります。
ただし、アイスワインを造るには、本来は秋に収穫するブドウを冬が来るまで鳥害や腐敗から守らなければなりません。また、寒波が来なければ造れないこともあります。貴腐ワイン同様に、自然の環境任せでリスクが高いワインなので、非常に高価になっています。
| 貴腐ワイン | アイスワイン | |
|---|---|---|
| 甘味の由来 | 貴腐菌の作用でブドウをレーズン状にする | 自然の寒さでブドウを凍らせて甘い果汁を得る |
| 甘味 | 濃厚でリッチな甘味 | とても甘いが、貴腐ワインよりは少し控えめ |
| 酸味 | 穏やか | フレッシュで生き生きとした酸味 |
| 香りの特徴 | ナッツ ハチミツ 鼻をつくセメダインのような香り 黄色いフルーツのコンポート | 完熟した柑橘系フルーツ 花の蜜 洋梨や桃のシロップ漬け など |
| どんな人向け? | ワイン初心者〜飲み慣れた方まで | ワイン初心者向け(わかりやすく美味しい) |
貴腐ワインと相性が良い料理
貴腐ワインと相性が良いのは以下です。
- デザート全般
- ブルーチーズ
- フォワグラを使った料理(フォワグラのソテー、フォワグラムース、フォワグラのパテ など)
基本的に貴腐ワインは、食事と共に楽しむものではなく食後に楽しむデザートワインです。ケーキなどのデザートにも負けない甘さを持っているため、デザート全般と相性が良いでしょう。
また、最もおすすめの楽しみ方はブルーチーズと合わせることです。甘い貴腐ワインによってブルーチーズの塩気と濃厚な旨味・コクが引き立ち、最高のマリアージュになります。
きむブルーチーズを使ったクワトロ・フォルマッジ(4種チーズのピザ)に、甘いハチミツをかけて食べたら美味しいよね。それと同じようなイメージだよ。
本来はデザートワインである貴腐ワインですが、例外的に合わせられる料理があります。それがフォワグラを使った料理です。フォワグラの濃厚な旨味と、濃厚な甘さをもつ貴腐ワイン。一見合わなそうですが、これまで体験したことのない極上のマリアージュが味わえるはずです。ぜひ一度、試してみてください。
貴腐ワインの美味しい飲み方
貴腐ワインを美味しく飲むためには、「グラス」「温度」「飲むタイミング」が大事です。
グラス
貴腐ワインを飲む時は、先がすぼまった縦長のチューリップ型ワイングラスを使用しましょう。複雑で甘美な貴腐ワインの香りを十分に楽しむためです。
また、大きいグラスではなく、普通サイズ〜やや小ぶりなグラスをおすすめします。容量としては、120ml〜220mlほどのグラスが良いでしょう。
横幅が広くて大きいグラスだと、貴腐ワインの香が拡散してしまい、味わいもぼやけてしまいます。
また、デザートワイン専用グラスを選ぶのも良いでしょう。
温度
貴腐ワインは、少し冷やして飲むと覚えておいてください。貴腐ワインの銘柄にもよりますが、基本的には8℃〜12℃くらいに冷やすのがおすすめです。
| 温度 | 理由 |
|---|---|
| 適度に冷やす(8〜12℃) Best!! | 甘さが引き締まる 爽やかな酸味が際立つ ハチミツやフルーツのコンポートの香りが美しく出る |
| 冷やしすぎ(7℃以下) Bad!! | 甘さが感じられなくなる 酸味が強く出すぎる 香りが捉えにくい |
| 温度が高すぎ(15℃以上) Bad!! | 甘ったるくなる 味わいがダレる、くどくなる 飲み疲れする |
飲むタイミング
貴腐ワインを飲むベストタイミングは、食前・食中ではなく食後をおすすめします。
まず、食前・食中に飲むには、貴腐ワインは甘すぎです。食前に飲むと舌が甘さで麻痺して、その後のお酒や料理の味が感じにくくなります。また食事に合わせるとワインが甘すぎて、料理の味を台無しにしてしまいます。
貴腐ワインは、食後にチーズやデザートと共に味わうのが最もおすすめです。
世界3大・貴腐ワイン
最後に、世界3大・貴腐ワインと呼ばれるワインを紹介します。
- ソーテルヌ(フランス)
- トカイ(ギリシャ)
- トロッケン・ベーレンアウスレーゼ(ドイツ)
①ソーテルヌ(フランス)

ソーテルヌは、フランス・ボルドー地方で造られる、世界で最も有名な貴腐ワインです。
ピレネー山脈から流れ出るガロンヌ川とその支流が生み出す、朝霧と昼の晴天という特別な気候により、理想的な形でブドウに貴腐菌が付着します。水分が抜けて糖分と香りが極限まで凝縮されたブドウからは、ハチミツやアプリコット、キャラメルを思わせる濃厚で華やかな甘味をもったワインが生まれます。
トロトロに甘いにもかかわらず、穏やかで豊富な酸味があるため、重たく感じません。長期熟成にも強く、熟成とともにナッツやスパイスの複雑さが増します。
「甘口ワインの王様」と称され、特別な日に楽しむ最高級デザートワインとして世界中で愛されています。
きむ世界最高の貴腐ワインと言われる「シャトー・ディケム」も、ソーテルヌですね。
②トカイ(ハンガリー)

トカイはハンガリー北東部で造られる、歴史ある貴腐ワインです。主に「フルミント」というブドウが使用され、貴腐化した粒だけを集めて仕込む伝統的な製法によって造られます。
味わいは濃厚でありながら、酸味が非常に高く、甘さと爽やかさのバランスが抜群。はちみつや柑橘の皮、ドライフルーツの香りに、どこか紅茶のようなニュアンスも感じられます。
フランス王が「王のワイン、ワインの王」と称賛したほどの、ソーテルヌと並ぶ世界最高の貴腐ワインです。
③トロッケン・ベーレンアウスレーゼ(ドイツ)
トロッケン・ベーレンアウスレーゼは、ドイツで造られる最上級クラスの甘口ワインです。トロッケン・ベーレンアウスレーゼはワインの名前ではなく、ドイツワインの等級名です。
ドイツにおける高級ワインとは、「プレディカーツヴァイン」というカテゴリーのものです。プレディカーツヴァインは6種類あります。
| カビネット Kabinett | 完熟ブドウ | 完熟ブドウから造られる。 プレディカーツヴァインの中では最も軽く甘さ控えめ。 |
| シュペトレーゼ Spätlese | 遅積み | 完熟ブドウをさらに収穫期を遅らせて摘み取り 造られるまろやかな甘口ワイン |
| アウスレーゼ Auslese | 房選り | 遅積みした房の中から良質な房だけを厳選して 造られる芳醇な甘口ワイン |
| ベーレンアウスレーゼ Beerenauslese | 粒選り | 完熟したブドウ粒や貴腐化したブドウ粒だけを 摘み取って造られる濃厚な甘口ワイン |
| アイスヴァイン Eisvein | 氷結ワイン | 凍ったブドウを搾り、凍ってない糖度の高い濃厚果汁だけを 搾り出して造る極甘口ワイン |
| トロッケン・ベーレンアウスレーゼ Trockenbeerenauslese | 乾粒選果 | 完全に乾ききった貴腐ブドウの粒だけを 選んで造る極甘口ワイン |
トロッケン・ベーレンアウスレーゼは、貴腐化してレーズン状になったブドウを一粒ずつ手摘みして造られる、ドイツの最高級甘口ワインです。
極めて濃厚な甘さをもちますが、ドイツワインらしい鋭い酸味が全体を引き締めており、味わいに驚くほど透明感があります。ハチミツ・桃のコンポート・柑橘などの爽やかで甘い香りと濃厚な甘味、爽やかな酸味、ミネラル感が幾重にも重なり、少量でも圧倒的な満足感があります。
「芸術品のようなワイン」と評され、まさに甘口ワインの究極形ともいえる存在です。
まとめ
世界最高の甘口ワインと称される貴腐ワイン。その極上の甘味と華やかな味わいは、飲んだ者を虜にする魅力があります。
非常に手間と労力がかかる希少なワインのため、価格は確かに高いです。しかし、価格に見合った価値はあります。まだ貴腐ワインを飲んだことがないという方は、ぜひ一度飲んでみてください。今まで味わったことのない高貴な甘さに、きっと驚くことでしょう。